孤独な檻の中


部屋の隅に置かれた一つの蝋だけが部屋を照らす唯一の光だった。ここはひどく寒い。体ががたがたと震えるのは、寒さが原因じゃないのかも知れないけれど。

「う、うぅっ、」

痛む身体を丸め嗚咽を漏らす。牢のような部屋には私一人。逃げだそうにも手足を縛られた縄のせいで動くことすらままならない。部屋には窓などなく、外に出るには取り付けられた一つの扉をくぐるしか方法はないように思えた。

「どう、して…っ、」

どうしてこのようなことになっているのか。ここはどこなのか。なにもかも分からなかった。私に嗜虐の限りを尽くした男は痛みに意識を飛ばしかけていた私の頬を殴りつけ、冷酷な表情に笑みを浮かべながら「また来ますね」と言い出て行った。先ほどまでの仕打ちを思いだし涙が溢れた。押さえきれない嗚咽が薄暗い部屋に響く。
こんな場所知らない。あんな少年知らない。なのに彼は私を知ったような口ぶりで、すべての元凶は私であるかのように痛みを与えてくるのだ。
もしかして誘拐にでもあってしまったのだろうか。警察は助けに来てくれるのか。
身に着けているのはぼろ切れのような紺色の着物だけで、携帯やバッグはどこにもなかった。そういえば先ほどの少年もおかしな服を着ていた。艶やかな紫の髪を一つに結い、若草色をした布でつくった服を身にまとっていた。着物とは違うそれは、まるで忍装束のような…。

「つッ、」

冷たい床に体を丸め震えていたが、股が発する痛みを思いだし唇を噛んだ。奴は悲鳴を上げる私を愉快気に組み敷きながらその動きを止めることはなかった。暴力的なそれはただ私を苦しめる目的しかなく、何時間にも感じられた時間は拷問としか思えなかった。いいや、少年は確実に私に拷問を行っていたのだ。残忍な色を映す彼の瞳が脳裏を過ぎり震えが大きくなる。
帰りたい。誰か助けて。
心は必死に叫んでいるのに、奴が万が一戻ってきたらと考えると怖くて声が出せなかった。いつ殺されるやもしれぬ恐怖。誰も助けにきてはくれないかもしれぬという絶望感。部屋に響くのは恐怖から荒々しくなった息使いと嗚咽だけで、後はなにも聞こえない。それが余計恐ろしい。ここには奴と私しかいないのではと錯覚してしまう。心が壊れてしまいそうだった。

「た、すけて…っ、」

その声に応えてくれるものはどこにもいなかった。


 
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