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神は死んだ、なまえはそう思った。

しかし事実神は死んでなどいない。むしろ優しげな微笑みを浮かべながらなまえの前に佇んでいた。女とも男ともとれる抽象的な美しい面、まるで外国の神話にでてくるような真っ白な服を身に纏った目の前の人物は呆然としているなまえにふんわりと微笑みかける。それはこの世のものとは思えぬほど美しく、普段のなまえなら思わず頬を染めてしまっていたことだろう。

「(ちょっと待ってよ…)」

しかしなまえは目の前の人物を視界にいれ、なおかつ自分が真っ白な空間にいることを理解した瞬間、たらりと背中に嫌な汗が伝うのが分かった。自分は死んだはすだ、猫を庇うなんていう普段の自分なら考えられないようなことをして。そう、私は死んだ。しかし今いるこの空間はなんだ?目の前の人物は?猫を庇って死んだと思えば真っ白な空間におり、目の前には恐ろしいほどに美しい人が。
これじゃあまるで……、

なまえは自身の考えを振り切るようにぶんぶんと頭を振った。そんな訳ない、あり得てたまるか。いま自分が置かれている状況を必死に理解しようと、なまえは普段あまり使っていない脳みそをフル回転する。しかし現状を打破する方法などまったく微塵とも思い浮かばなかった。

「やぁ、さっきぶりだね!」

なまえが眉を寄せながら真っ白な地面(いや、もしかしたら真っ白な空間に浮いているのかも知れない)を睨みつけていると、目の前の人物はまるで鈴を転がしたような声を発した。ことごとく自身の思考から抜け出したなまえは弾かれるように目の前の人物を見つめる。さっきぶりもなにもなまえはこんな美しい人物を見たのは生まれて始めてであるし、こんな格好をしている人がいたら嫌でも記憶に残るはずだ。つまり、なまえは目の前の人物に会ったことなど一度もないはずなのである。

「えっと…、あなたは?」

これで 誘拐犯でーす!などと言われたら私はどうすれば、頭の片隅でバカなことを考えながらも訝しげに見つめる。目の前の人物はきょとりとした表情をした後楽しげに笑いだした。急に爆笑しだしたにもかかわらず不快感を抱かないのは相手の容姿ゆえか。イケメン爆発しろ、なまえは目の前で笑いこける人物をキッと睨みつけた。

「あっははは!ごめんごめん!そんなに睨まないでよ〜!」

はじめの優しげな微笑みはどこにいったとツッコみたくなるほどのへらへらした笑みをみせる目の前の人物は「ふぅ、」と笑い過ぎてでた目尻の涙を拭った。

「それで、僕はだれだって?」

僕、という限り男なのだろうか?なまえはにんまりとした笑みを浮かべる男になんだか嫌な予感がした。まさか、とあり得ない妄想ばかりが頭を駆け抜ける。目の前の男の動かす形の良い唇が、まるでスローモーションのようにゆっくり動くのを見た。

「僕はさっき君に助けられた猫!僕に名前はないけど、君たちは僕のことをよく"カミサマ"なんて言うよ!」

神は死んだ、なまえはこれから起こるであろう悪夢のような出来事をすべて悟ったのだった。


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