承太郎の幼馴染 | ナノ






「エジプトォ!!?」

開いた口がふさがらないなんて表現は今まで沢山見てきたけど、俺自身がそうなったのは生まれてはじめてだったりするワケでして、淡々と語った承太郎は知ってんのに何で実の息子の俺が知らないのかって問い詰めたい相手はすでに飛行機の中なワケでして。昨日はただ出かけるしか言ってなかったじゃんか!という心の叫びは1時を知らせる時計のポーンっという音に打ち消された。

「て言うかなんで俺連れて行ってくれないワケ!?」

「新婚気分を味わいたかったんだとよ」

「なんだそれッ!」

抱きしめていたクッションを勢いよく承太郎に振りかぶったが承太郎は何てこと無いかのようにパシリと受け取ると俺の額にでこピンをくらわした。痛くはないがなんだか屈辱的だ。なんだよその微笑ましいモノを見るような表情は!俺は親に放って行かれて悲しいが故に拗ねてる子どもじゃあねーんだぞ!

「俺だって一週間くらい一人で暮らせるってーの。べつに承太郎がいなくたって、」

そう言いかけた俺の言葉は途切れた、というか承太郎の骨ばった大きな手に口を押さえられたことによって言葉を発せられなくなったという方が正しい。俺が座るソファの真横に座っている承太郎に文句を言おうにもん゛ーん゛ーというくぐもった声しか出せないことが悔しい。

「俺がいなくたって、何だって?」

「んぐぅ…!?」

ほの暗い炎が燃えさかっているような承太郎の瞳はギラギラと獰猛な色を映し出している。その事にびっくりした俺は自身の腰を引いて承太郎から距離をおこうとするが俺の腰にまわされた承太郎の筋肉質な腕がそれを許さなかった。いつもより数段低い声で発せられた承太郎の言葉は質問ではなく咎め。俺の口に侵入してきた数本の長い指が口内を犯す。もう片方の手で頭を押さえつけられているから顔を逸らすこともできずにされるがまま。飲み込むことができなかった唾液が承太郎の指を伝って俺の顎を流れ落ちていった。

「んんぁ…っ!」

だんだんと苦しくなってきた俺は切れ切れとした息を吐きながら唯一自由に動かせる手で承太郎の肩を叩く。弱弱しい力しか出せなかったが暗に息がもたないという思いが伝わったのか承太郎は俺の唾液がついた指を引き抜き後頭部に添えられた腕をどかした。その拍子に一気に酸素が入ってきた肺はその衝撃に耐えきれなかったのか俺は勢いよく咳き込んだ。生理的な涙が浮かんだ瞳でギッと承太郎を睨みつけると情欲を孕ませた視線を俺に向けながら自身の指をしゃぶっていた。さらりと零れ落ちる髪から覗くスカイブルーの澄んだ瞳の中に映し出される激情があまりにも妖艶で俺は咳き込んでたことなんて忘れて承太郎に視線を奪われていた。
暫くそうしていただろうか、承太郎が自身の口から骨ばった数本の長い指を引き抜いたことでハッと我にかえる。口から引き抜いた指には艶かしい糸がひいていた。

「お前は俺なしでなんて生きられねーんだ。その事を忘れんじゃあねーよ」

俺はなにも口にすることができずにただただこくんと頷いた。




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