みょうじさん、いつまで寝てるんだろう。もうすぐ次の授業、始まるんだけど。
せっかくみょうじさんの隣の席になったのに、何もできずに過ごして早1ヶ月。声をかけるいいチャンスだ。下心をたっぷり忍ばせながら起こしてあげよう、と手をのばしかけたところで、彼女の友人が彼女の脳天にチョップをくらわせた。うん、なんかよく柳生が仁王とかにしてるようなやつ。アレ絶対痛いよね。まぁ俺には関係ないけど。
横目で反応を見ると、うわ、涙目だ。なんというか、興奮?する。ちょっとドキッとした。心臓に悪い。
チョップをくらわせた友達が席に戻ると同時に次の授業の教科担任が教室にやってきた。机から教科書を出して号令を待っている間も気づかれないようにそっと横目で観察。どうやら痛みはおさまったようで、みょうじさんは前の授業の教科書を机にしまったあと机の隅に置いてあるパック飲料からじゅるる、と水分を補給した。
彼女がストローから口を離したところで丁度よくチャイムが鳴る。学級委員長の号令で礼をし、それからみょうじさんはようやくこの時間使う教科書を出そうと机に手を入れた。…入れたものの、出てくるのは数学やら、古文やらの教科書ばかり。不思議に思っていると、今度は両手を机の中に入れた。そして数秒後、彼女はパチパチと瞬きをし、俺の逆側の隣の席を見つめた。もしかして、教科書忘れたのか?しかし、何故かその席は空。さっきの授業はちゃんと出てたと思ったんだけどな。

「ユミどこいった?サボりか?」

先生も気になるらしく、クラスメートに所在を尋ねた。

「ユミちゃんはさっき早退しましたー」
「ほー。風邪か?」
「熱出たそうですよー」

へぇ、お気の毒に。…え、じゃあみょうじさん教科書見せてもらえないじゃん。
今日確か音読するはずだからヤバイんじゃないかな。っていうか、なんかチラチラこっち見てる…?もしかしなくても、ここは俺の出番?

「みょうじさん、教科書忘れた?」

内心の喜びを隠し、人当たりの良さそうな顔でみょうじさんに小声で話しかける。
みょうじさんは一瞬びくりとして、それから申し訳なさそうに、

「……見せてくれる…?」

と上目使いでお願いしてくれた。可愛い。もちろん返事は決まってる。

「いいよ」

くっつけた机の真ん中に指定された頁を開いた教科書をのせる。先生とクラスメートが机を動かした音が気になったのか振り替える。何人かがよかったな、とでも言うように笑ってくれた。そいつらにみょうじさんに気づかれないよう小さくピースサインを送って見せた。クラスメートはみんな、俺がみょうじさんに思いを寄せていることを知っているのだ。




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