……やばい、教科書、忘れた。

気づいた時にはもう既に遅く、学級委員長の手によって号令が済まされていた。
前の授業から目を覚まさない私を見かねて友人が先ほど起こしてくれたのだが、うん、もうちょっと早く起こして欲しかったな。そしたら他のクラスから借りてこれたのに。とはいえ悪いのはチャイムが鳴っても起きなかった、遡れば居眠りをしてしまった、私が悪い。
しょうがない、見せてもらうしか…ってあれ?隣のユミちゃんは?
そんな私の疑問を先生が代弁してくれた。

「ユミどこいった?サボりか?」
「ユミちゃんはさっき早退しましたー」
「ほー。風邪か?」
「熱出たそうですよー」

なんてバッドタイミング!
嘘でしょ、えぇー…。左側、は幸村くんだ。
話したことないし何かキレイだしモテるしちょっとコワいし……要するに頼みづらい。どうしよう。
そんなやってあたふたしてる私を見かねたのだろうか。先に幸村くんのほうから声をかけてくれた。

「みょうじさん、教科書忘れた?」
「……見せてくれる…?」
「いいよ」

幸村くんがガコン、と机を近づけてくれるのを見てわたしも自分の机を彼の方に寄せる。そのくっつけた机の真ん中に幸村くんが開いた現代文の教科書をのせてくれる。

「ありがと」
「どういたしまして」

私のとは違って、落書きも書き込みもないきれいな教科書。
ノート、ちゃんととってるのかな、きっと。わたしは面倒になるとすぐにノートをほっぽりだして書き込み作業を始めちゃうんだけど。
授業もきかずそんなことを考えていると頁が勝手にめくれそうになった。…押さえてもよいのだろうか。仮に、幸村くんが潔癖症とかで自分の持ち物に触られたくない人だったりしたら…って、そんなわけないか。考えすぎ。端っこのほうを軽く押さえて幸村くんの方を見る。が、幸村くんは授業にちゃんと参加している。目は合わなかった。
ちょっとほっとしながら、私も黒板を見てノートをとるために筆箱からお気に入りのシャーペンを取り出す。
せっかく見せてくれてるんだからちゃんと授業受けないと。



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