精市の久しぶりの休日を二人で過ごしたいということで、久しぶりに精市の家に来た。服にも少し気合いを入れて、友達の勧めで匂いつきリップとかもしてみた。友達曰く、『たまには幸村くんの一人や二人、誘ってきなさいよ』だそうだ。一人でもいっぱいいっぱいだというのに彼女はいったい何を考えてるのだろうか。

「お待たせ。はい、紅茶でよかった?」
「うん」

本当に、久しぶりだ。最近は精市が部活帰りにちょこっと私の家に来たり、学校の中で話したりとかばかりだったから、何度も来てるはずなのに緊張する。精市がお茶を取りに行ってる間もキョロキョロと忙しく目を移動させてしまっていた。そしてその折りに机の上に私と精市のツーショットの写真が飾られているのを発見し、ますます落ち着きを無くした。精市が来てる時は隠してるけど実は私も自分の部屋に飾ってある。お揃いみたいで嬉しい…なんて、絶対言えない。恥ずかしすぎて死ねる。

「んー…?」
「どうかした?」

ベッドサイドに寄りかかるようにして座っていた私に紅茶を出して、精市がベッドに腰かけた。不思議そうな声をあげるので上半身をよじって彼をみると、じーっと見つめられた。そ、そんなに見つめられるとオーバーヒートしますって精市くん!

「…なまえ、リップ変えたでしょ」

そんな私の心の声は届かなかったのかさらに顔まで近づけてきた精市は私(の唇!?)の匂いをすん、と嗅いだ。
こんなにすぐ、気付かれるとは思ってなかった。驚きながらも頷くと精市は満足そうに笑って、それから興味深そうに首を傾げた。

「珍しいね、匂いつきなんて」
「そ、そそ、そう?」

まさか精市を誘う為なんて絶対に言えない。っていうか、そもそも友人が誘ってこいと言ったのであって、わたしが誘いたかったわけじゃないし。でも結局つけると決めたのはわたしだから、じゃあやっぱり私が欲求不満ってこと?えぇ、それはない、さすがにない。あってもらっちゃ困る。
精市が指でわたしの顎を固定するから目を反らしたいのにそれができない。
ふふふと笑ってわざとわたしの目を覗き込む精市は、なんだかとてもたのしそうで悔しかった。

「もしかしなくても俺の為?」
「!」
「え、嘘。図星?」

自分で言ったくせに目を大きくした精市に、違うと言いたいのに声が出なかった。さっき写真がどうのって言ってたけど、こっちの方がよっぽど恥ずかしい。よっぽど死ねる。よっぽど死ねるとか意味不明だけど要はすごくすごくすっごく恥ずかしいってことです。死ぬ。
顎を掴んでいた指が頬に滑って、優しく両手で顔を包まれた。優しさを示すなら、とりあえず私に顔を隠させて欲しい。

「服にも気合い入れてくれたの?あ、でもどっかに行く時はこんな可愛いかっこしちゃ駄目だからね」

もはや返事をする気にもなれない。うん、だって死んだんだもの仕方ないよ。
でも気合い入れたの気づいてくれて、それを可愛いって褒めてくれたのは嬉しい。
まだ完全に生き返ってはないけど、お礼はしなくちゃ。もごもごしながらありがとう、と呟くとふふっと笑われた。

「俺も嬉しい。なまえが俺の為にそうやって頑張ってくれたのが」
「…うん」
「ほら、おいで」

精市の隣に座ろうとしたのを彼の腕が阻んだ。後ろ向きに膝の上に乗せられて、スッと密着された。お腹に腕が回った。ついでに、ほっぺも近づけられた。なんなんだろう、これはもしかして、

「キスしたくなっちゃった。いい?」「ん、」

……もしかして、成功?
私の返事を待たず、精市はキスを敢行した。最初は押し付けられるだけだったそれも、いつの間にか深いものに変わっていって、だんだん意識が朦朧としてくる。
やっと精市が離してくれたときには、私は酸欠でろくにしゃべることもできなかった。精市はというとペロリと舌をだして、なんというか、非常にエロい顔で笑った。

「ごちそうさま。おいしかったよ」

精市に会う時はまたこのリップつけようかな。
まだはっきりとしない頭で思ってる間に、精市は耳元で頂きます、と妖しく囁いた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -