カーテンを開けてみると、真っ暗な夜空が目にうつってがっかりした。雨音がしていたからわかっていたけど、やっぱり残念だ。

今年も、天の川は見れなかった。

『何もなまえが悲しむことないじゃないか』
「だって…」

電話越しの精市の声で彼が苦笑するのがわかった。午後9時。朝はイライラするくらい太陽が照りつけていたのに夜になってみると、これだ。
夕方あたりから曇り始めて、今はザーザーと雨が降っている。
精市の声も、雨の音で度々途切れる。

「一年に一度しか会えないのに、可哀想」

毎年毎年、こうやって雨は彦星と織姫の逢瀬を邪魔するのだ。それだけじゃ飽きたらず、今は私と精市の電話も邪魔している。

「雨なんか、きらい」
『雨の方が可哀想だな、俺は』
「どうして?」
『どうしても何も、雨は意識して二人を邪魔してるわけじゃない。それに、会いたいなら会いに行けばいいんだ』

精市らしい。といえば精市らしい発言だ。でもそれじゃ彦星が可哀想だ。我慢して我慢してやっと会いに行けると思ったら雨で天の川が増水、なんて。

そう言うと彼はまたおかしそうに笑って私に反論する。

『じゃあやっぱり俺は彦星が嫌いだな』
「嫌い?」
『んー。嫌いって言うよりムカつく、って感じかな。だってソイツは早く一年たたないかたたないかーって祈ってるわけだろ?』
「うーん、まぁ」

なんだかちょっと話がずれてきたような気がする。完全に精市ワールドだ。

『要するに俺の敵なわけ。彦星は。だって俺は一年がもっと長ければいいのにっていっつも思ってるんだ』
「え?」

丁度その声に重なるようにして玄関のチャイムが鳴った。一人暮らしだから、出てくれる人はもちろんいない。

『開けてくれない?ヘタレな彦星と違ってちゃんと会いに来たよ、俺は』

ケータイをベッドの上に投げ捨てて、私はそう長くもない玄関までの距離をダッシュした。
ドアを開けると目の前には満足そうに目を細めている精市。

「びっくりした?」

こくんこくんと何度も首を縦に振るとふふっと笑われて頭を撫でられた。
くすぐったくて、恥ずかしくて抱きつくと、そのまま精市に抱っこでさっきまでいたベッドに連れていかれた。

「ヘタレたカップルのかわりに、今日は俺たちが愛を語らおうよ」

後ろからお腹に絡まる腕にとてつもない幸福を感じる。

「精市大好き」

織姫様と彦星様にも、この幸せをわけてあげられればいいのに!




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -