ザーザーザーザー。

今朝の天気予報で、雨が降ると言っていた気がする。
それに昨日の放課後の時点で、この目の前にいる彼女はケータイをみて『明日雨かー』とひとりつぶやいていたような気さえする。いや、気じゃない。確かに言っていた。なのにどうしてだろう。

「ねぇ、だめ?」

傘に入れて、と。
目の前の女は言ったのだ。今しがた。
雨で部活がミーティングしかないのをわざわざ誰かに確認したうえで俺を待ち、というより待ち伏せし、傘をねだるなまえは今日が雨であると言うことを知らなかったはずはないのに。
別に俺に彼女を濡らして帰らせる趣味はないし、相傘くらいなんということもないのだけれど。

「駄目、っていうか…なんで?」
「んー…」

やっぱり何か考えがあってやっていることなのか、うーんと唸る。

「今日雨降るの知ってたよね。わざと忘れてきたの?」
「…うん」
「うん、って…。なんで?」

なんで。
さっきから俺の頭はそればっかりだ。
傘をわざと忘れてきて、なのに結局俺に傘を借りにくる。
なんで、という簡単な問いになまえはやっぱりずっと唸ってて、どっちかっていうとそれは俺がすべき行動なんだけど、と文句を言いたくなる。
するとなまえはふいに俺をみて口を開いた。どうやら理由を話す気になったらしい。

「相合傘」
「…は?」
「相合傘したくて忘れてきた」
「……それだけ?」

相合傘。と、いうのはアレだよな、二人で一緒の傘を挿してってやつ。
そういえばさっき俺自分で相傘っていったじゃないか、心の中で。
でもそんなことはどうでもよくて、俺にとってはなまえがそんなことを言ったということが重要だった。
どちらかといえばサバサバした性格のなまえは、もしかしたら俺より乙女心というものがない。いや、俺は別に乙女じゃないけど。なんていうの?ムード?

「精市、なんでお前がって顔してるよ」
「え、顔にでてた?」
「失礼ね。そこは否定してよ。…別にいいでしょ、気分よ気分」
「…まぁ、いいけど」

まぁいい、どころかすごくいい、最高。
雨の日は嫌いだけど、こんななまえが見れるならいいかなって思う。
さぁ、早く帰ろう。
雨が上がってしまうまえに。





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