愛の言葉を囁いたら平手打ちシリーズ



「聡美ちゃん」
「んー?」

いつものように夕飯を食い終わってくつろいでいるひと時。

習慣のように着いているテレビに映るバラエティー番組をBGMに、聡美ちゃんはみかんを剥くのに夢中だ。

「なあー」
「んー?あ、おみかんどうぞ」

綺麗に剥けた!なんて嬉しそうにツルツルとしたオレンジ色の球体を差し出してきた。

何個剥く気なんだろう。

コタツの上には綺麗に剥けたみかんがゴロゴロしている。

受け取ったみかんを半分に割り、そこから一房取って口に含む。

あ、上手い。


「これ上手いみかんじゃな」
「そうでしょうそうでしょう。スーパーで散々味見して買ったの」


得意気にそう言って、聡美ちゃんもようやくみかんを食べ始めた。


「美味しいー」


目を細めながら、幸せ!っていう表情の聡美ちゃんを見ていたら、俺も幸せ!っていう気分になった。


もそもそと移動して、聡美ちゃんの隣りに潜り込む。


「え?なに雅治君、狭いんだけど」


コタツから出たら一瞬にして冷えた身体を聡美ちゃんの身体にピトッとくっつき暖め直す。


「冷たい!」
「聡美ちゃーん」
「何よう」
「好いとうよ」


ようやく目を合わせてくれた。
まだ口の中のみかんをもごもごさせてるけど。


「どうも」


そうそっけなく言う聡美ちゃんは少し照れているんだと最近気付いた。


「大好き。マジで好き。超かわええ。あいらぶゆー」
「え、なに止めてよ」


さらにたじろぐ聡美ちゃん。
コタツの暖かさと、隣に感じる聡美ちゃんの暖かさに幸せな気分になる。


「ほんとうに、好いとうよ」


囁くように、聡美ちゃんの目を見ながらそう言った、その瞬間。


パシンッ


頬に衝撃と軽い痛みが走る。
え!なにこれ‥


「‥‥‥‥」
「‥‥聡美ちゃん?」


え、ビンタ?何故?


「‥‥ごめん、恥ずかしすぎて、つい」


そう言って聡美ちゃんはまたみかんを食べ始める。


「泣かないでよーごめんって」
「泣いてなか」
「ごめんね、ほら、あーん」


差し出してきたみかんを指ごと食べてやる。
甘い。


「もう。」


聡美ちゃんの指を甘噛みして、チュッと音をたてて離せば、物凄い速さで布巾で拭われた。傷ついた。


「雅治君、私も好きよ」


若干、しょうがねーなーみたいなニュアンスを感じとったが、俺の顔を覗き込んでそう言ってくれた聡美ちゃんを抱き締めてこたつに横になった。


「今日このまま寝たい」
「だーめ。風邪引くでしょ」
「あー、もう駄目だ、寝る。おやすみんしゃい」
「もう。10分だけね」





そのまま二人で朝まで寝てしまって、バツの悪そうな顔の聡美ちゃんが謝ってきたのは、また別の話し。

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