覇王色の覇気の持ち主
「マネージャー!」
昼休み、男友達と弁当を食べようと机をくっつけた所だった。
教室の扉がガラッと開き、高等部の制服を着た男子生徒が大きな声でそう呼んだ。
教室は静まり返る。
「は‥?幸村部長?」
つかつかと私の方へ歩いてきた部長は、にっこり笑って、
「ちょっと、顔貸せよ」
こ、こえええええ!!!
一緒に食べるはずだった男子達は、みんな大慌てで、「幸村先輩!チース!」とか「先輩、お疲れ様です!」とか言っている。
「こいつ、ちょっと借りるね」
そう言って私のお弁当を勝手に掴み、教室の外に歩き出す。
私は慌ててそれに付いて行く。
途中、仲の良い男友達が、「幸村先輩まじかっけー」と呟くのが聞こえた。
屋上には誰もいなかった。
日当たりの良い所に腰を下ろす。
「部長、相変わらずヤバいっすね。本当ヤバい。マジで」
「ハハハ。お前は相変わらず頭悪そうだね。安心したよ」
あ、それと、もう部長じゃないだろ。部長は赤也。
そう言ってきたから、もう赤也も部長じゃないっすよ、と返す。
部長が自分の弁当を広げだしたから、私もそれにならう。
「で、お前いじめられてるんだって?」
大体予想は付いてたが、こんなに直球で聞かれるとは思わなかった。
「‥いじめられてないっすよ。さっきだって友達と一緒にいたじゃないですか」
「男子だけだろ」
「私モテモテなんすよ」
「女子は」
綺麗な箸使いでご飯を食べながら攻めたててくる部長。まじで怖い。
「自分でなんとかできます。別に物隠されたりリンチされるわけでもないし。本当大丈夫です。ご心配どうもありがとうございます」
「あっそう。別に心配したわけじゃないよ。情けない所を見て馬鹿にするために来たんだよ」
いやほんと、ありがとうございます。
それから新人戦の話をしたり、中等部の新レギュラーを教えたりして時間は過ぎた。
「はあ、高等部まで遠いな」
「いや、あのマジで遠い所わざわざおこしいただき‥」
「あんまり授業サボるなよ」
「‥そっすね」
「また来るから」
そう言って私を昇降口まで見送らせ、帰って行った。
‥もうサボりませんよ。
チクったのは丸井先輩か。本当、お節介。
▼ しおり 目次へ戻る