部活帰りに寄り道を



「あ、丸井先輩」
「よう、マネージャー」


チース、なんて軽い挨拶をされたのは学校の近くのコンビニの前。


結構明るめの茶髪を派手なゴムで緩くまとめて、衣替えが済んだ10月だというのに上はワイシャツで短いスカート。腰にカーディガンを結び、だらだらと歩いていた女子生徒。
遠目から柄の悪い中等部の女子がいるなぁと思ってたら、こいつだったのか。立海テニス部マネージャーの北七栄。

「んだよ。そっちももう練習終わったのか?」
「はい。新人戦近いから身体休めろっつーことで」

話しながら店内に入る。

今日あっついっすね。アイス買おーっと。
あ、俺も。

偶然目的が一致したため一緒にアイスコーナーへ向かう。

「お前なんにすんだよ」
「いや、迷ってんすよ。」
「俺きーめた。お前もこれでいいじゃん、早く決めろよ」

奢ってやろうかな、なんて先輩らしいことを思ってせかす。

「いや、悪いんすけど今そんなチャラチャラした気分じゃないんで。チョコ系よりこう、爽やかなやつ食べたいんすよ」

ガリガリ君のソーダかブドウか‥そう言ってまた悩み出す。

別に強制させるつもりじゃなかったのに激しく拒否られて少しイラっときた。俺は今バニラとチョコのまったりとした気分なんだよ。

一分ほど迷ってからソーダを手に取り、君に決めた!なんて言っている。

「貸せよ。奢ってやんよ」
「うはああ!あざーっす!!」

レジへ行き、あんまん肉まんピザまんも一つずつ頼み会計を済ませる。

「先輩相変わらずっすね」
「まあな。これも一個やるよ。肉まんピザまんの中から選べ。あんまんはやらねー」
「うわっ今日先輩超機嫌良い!」

まあ確かに俺が食いもん他人に分けてやるのはかなりレアだ。

コンビニを出て、アイスをあける。

「ここで食ってきます?」
「いや、座りてえ。公園行くぞ」

もう10月だというのに、今日はずいぶんと暑い。日が照りつけて、若干汗がにじむなか歩きながらアイスに口をつける。あー、うめえ。

「とうちゃーく」
「そう言えばお前今日赤也と一緒じゃねーのな」
「いつも私があいつと一緒にいると思ったら大間違いですよ」

こいつと赤也は家が近いらしく、小学校から良く一緒にいて、中学に上がって赤也がテニス部に入ったのと同じ頃に男子テニス部のマネージャーを始めた。
傍から見ても二人は喧嘩もするが仲が良く、付き合ったりしねーのかなとひそかに思ってたのだが。

「また例の彼女とよりもどったとか言ってたからデートじゃないですかね」
「あー、つーかまた別れてたのか、それすら知らなかったぜぃ」

俺らが卒業してからすぐに、赤也に初めての彼女が出来た。中学生らしく別れてよりもどしてってのを繰り返している。

「あー、アイスを食べて若干冷えた身体にこの肉まんピザまんが染みるーうめー」

どっちか選べって言ったら、半分ずつ下さいとなんとも欲張りなことを言ってきた。
それに応じてやる俺、優しいよな。まあ俺も両方食いたかったから良いけど。

「お前高等部入ってもマネージャーやんの?」

夏の大会が終わり三年は引退したのだが、大体の三年の部員は高等部でも続けるから、と勉強に差し支えない程度に部活に出ている。
だから今も部活に出ているこいつも続けるんだろうけど、赤也に彼女が出来たから。

こいつ、赤也の事好きだったんじゃねーかな。なんとなく、だけど。

「続けますよ。マネージャー」
「ふーん。まあ助かるぜぃ」

こいつは良いマネージャーだった。敬語は微妙に使えねーけど。良く働いたし、地味で辛い裏方作業も嫌な顔一つせずにこなしていた。何より、俺ら以外で赤也を叱りつけられるのなんて、こいつぐらいだし。

「テニス部好きなんすよ。絆深いし、仲間って感じで。またほぼ同じメンバーで部活できるの、嬉しいじゃないですか」
「え‥お前どーした?気持ち悪」
「うえ!?ひどっ」


(俺も嬉しいよ。)そう言ってやろうかと思ったけど照れくさくて、かわりに真面目に語った七栄をちゃかす。



「おーし、俺ゲーセン行くけどお前どーする?」
「お供しまーす」



「マリカーやりましょうや、先輩」
「ふっ良いぜ。ギッタギタにしてやんよ」


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