04.
「おい、チビなアユよ。お前さ……恋愛に年齢は関係ないっつータイプ? チビ」
ミーティングが終わり、各々が仕事を始める……という所で、ソファーに寝転んだザップがアユに話しかけてきた。
「は? なんですか急に。てかいちいちチビとか入れないでくださいよ。丁寧か!」
「誘拐犯が未成年好みのジジイだったらどーすっかなーってな、考えた訳よ。オラ言えって」
「どーすっかなーって……年齢……?」
うーん……とアユは考えるポーズをとった。ザップは首だけを持ち上げて、そろーっとスティーブンのデスクの方を見た。書類に目を通しているようだが、おそらく耳だけはこちらを向いている。
「年齢は、関係ありますよね」
「ま……まじかぁい」
関係ないスタンスで行ってほしかった…ザップは顔を覆った。番頭、ピンチ!
「すっごいお爺さんだったら、確実に相手の方が先に亡くなりますから……きっとつらいですよ、それは」
あ、お爺さんの話か。ちなみにスティーブンはお爺さんではなく、おじさんだ。ザップは顔を覆っていた手をはずしてニンマリと笑った。番頭! 希望が見えてきましたぜ!
「じゃーよぉ、何歳差まではOKとかあんのか?」
「……私の恋愛事情聞いてどうするんですか。弱み握るつもりですか」
ちっげーよ! とザップは声を張り上げた。そっちのデスクで戦々恐々しながらお前の話聞いてる番頭がいるんだよ! とは心の中で叫んでおいた。
「いーからホレ、言わねーかチビよ」
「あ〜っちょっと……待ってくださいね、考えます」
そこからちょっとだけ沈黙が続いた。ザップはもう一度首だけを持ち上げて、そろーっとスティーブンのデスクを見た。ペンを握ってはいるが、先ほどの所から全く書き進められていないようだ。
「さすがに親と同じくらいの年の人は……うーん……」
まあそれはないだろう。スティーブンは三十路だし。あ、ということは?
「15歳差ぐらいまでですかね?」
「お、おう! そりゃーまぁ、妥当だな!」
妥当! 妥当だ! そう言ってザップは半笑いになった。もはや首を持ち上げなくとも、スティーブンがどんな顔をしているか想像できる。口元を抑えて、にやっとしているに違いない。
「じゃー33歳くらいまでっつーことだな」
「そうですね……あ! ツェッドさん、買い出しですか?」
私も行きます! そう言ってアユはツェッドと共に事務所から出ていってしまった。ザップはソファーから起き上がり、ちらとスティーブンを見た。案の定、口元を手で抑えていた。もはや書類に目を通してすらいない。
(さーてと……)
これで駄目だったら、もうやるしかねーな。
ザップは頭をかいて立ち上がり、いつものようにレオナルドにちょっかいを出し始めた。
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