Magic Green!!!本編 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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03.

ハロー、ミシェーラ。兄ちゃんは今、後輩の女の子になりすましています。

「ギャハハ!!ちょ、チビこっち並べ!!」

あ、決して何かに目覚めたって訳じゃない。どうやら確定事項らしくって、仕方なく、だよ。

「え!? これは……レオさん!? 私!?」
「すっごーい!! レオっちもかーわいいけど、アユっちが2人っていうのもいいわぁ〜!」

怖い上司に命令されたっていうか。だからライブラの仕事で、義眼の力を使ってる。決して、決して! 女装とかに目覚めたって訳じゃない!

「あ”ーっ!! くっそ恥ずかしいんすけど!!」

レオナルドは天井に向かって叫んだ。誰がどう見ても、アユの姿だが。彼は今、”神々の義眼”を使って自身の姿を「アユ」に書き換えて周囲に見せている。

「彼女自身を1人で危険な場所に置くわけにはいかないからな。君も非戦闘員ではあるが……一応男だし。今回は少年の演技力にかかってるって訳だよ。ただ、問題はまだある」

コーヒーをすすりながらレオナルドの方を見下ろすスティーブンは、至って普通の顔色である。ていうかスティーブンさん、一応ってなんすか。俺はちゃんと男です。

「誘拐されたうちの、最初の3人は一般人だった……が、4人目と5人目のこの少女達は、それぞれ術士とシャーマンだ。つまり3人目と4人目の間に、誘拐犯が”対象が何らかの術使い”だという情報を得たってことになる」
「なるほど。ということは誘拐犯は、それまでアユさんが魔法使いだということを知らなかった……今も、グルズヘリムだということを知らない可能性が高いですね」

ツェッドがそう言うと、スティーブンはこくりと頷いた。アユは目の前に自分がいて、しかも違う動きをしていることにいちいち驚きながらじっとレオナルドを見つめている。

「おそらく、誰かに雇われているんだろう。今回の作戦で、誘拐犯とその”誰か”をさっさととっ捕まえて、年が明けるまでにこの件は片付けたいと思ってる」
「あ、あの〜スティーブンさん?」

アユの姿をしたレオナルドが、そろーっと手を挙げた。

「今の俺じゃ、”神々の義眼”で魔力まであるようには見せられない気がするんすけど……」

レオナルドは神々の義眼の保有者であるが、それを完全に使いこなせるまでには至っていない。極めれば、おそらく魔力があるように見せることも可能な筈だが。誘拐犯の方も、対象の魔力の有無を識別することぐらいは出来るだろう。

「まぁ、そうなんだよ。だから……アユ。遠距離からレオナルドに、”最弱の結界”を張ってほしい」
「!」
「そんなこともできるの? アユ」

まぁ……とアユは微妙な顔をして笑った。彼女は日本に戻っている間に、ライブラで役立つであろう魔法をいくつか習得してきていた。”最弱の結界”を他人に張るというのも、その時に覚えたものだ。まだ本当の人間には試したことはないが、牙狩りでなければ害は感じられないはずであるという。

「人に向けて魔法を使うってこと自体に、まだちょっと抵抗があるんですけど……やってみます」
「よし。それじゃあ、大まかな作戦案を説明しよう……」

誘拐犯が現れるのは、毎月12日か24日の昼過ぎ。5人目はつい先日……12月12日に行方不明になった。Bブロックにいるめぼしい女性を路地裏に誘い込み、そこから姿をくらましている。犯人は複数名で、全員深い青色のマントに身を包んでいるらしい。

「アユの姿をしたレオナルドがBブロックにいれば、必ず向こうは近寄ってくる。路地裏に入った直後に、ザップとツェッドで誘拐犯を取り押さえろ」
「了解です」
「うぃーっす……って旦那は?何してんだよそん時」

ザップのその言葉で、全員がクラウスの方に顔を向けた。相変わらず怖い顔をした紳士が、む、と顔を上げた。

「私は近場で待機だ。恐らく犯人が雇い主のことを話すだろうから、その位置を特定してギルベルトと現場へ向かう」
「K.Kは敵が大人数だった場合に備えて遠方からの援護を頼む。アユは……レオナルドに向けて結界を張れる場所にいてもらう。見晴らしのいい廃ビルが近くにあるからな」

スティーブンがそう言ってアユの方に笑みを向けた。驚くべきことに、一瞬たりとも隣にいるレオナルドの方と見間違えなかった。

「……で? スティーブン先生は何すんのよ」
「僕は全体の指揮と……結界を張ってるアユの護衛だよ」
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