Magic Green!!!本編 | ナノ
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09 Bloody Christmas

01.
12月のHL。祭り好きなこの街は、暦の上ではDecember……になる前から、既にクリスマス一色だった。1日を迎えた瞬間それに拍車がかかり、街は赤と緑の飾り付けで埋め尽くされた。

「ぎゃー! ザップさん! はや、はやくしてくださいって!」
「喚くなチビ! くっそ、ちょこまかとめんどくせぇ奴らだ……! おい! ラップ外せ!!」

パン! という破裂音と共に、アユの髪色が黒くなったのを確認して、ザップは右手の親指を噛んで糸のように血を出した。

「斗流血法……カグツチ」

サンタ束縛!

真紅に輝く血の線が、アユのいくつもの髪束を掴んで高速で振り回したりかぶりついたりしていた4体の小さなサンタクロースを縛り上げた。

「「「「ギョギョ〜!」」」」
「ギョギョ〜! じゃねぇ! 魚類か!」

宙ぶらりんにされた4体は、ぱっと見た限りでは赤い服に白い髭の可愛らしいサンタクロースだが、その目は狂気に滲んでランランと光り、口元からは涎が滴っている。

「なんですか、この狂ったサンタは!!」
「知らねーよ! そこら辺のウスラ馬鹿が街中に放った出来損ないの玩具かなんかだろ!」

ギョギョっとうるさい4体を血法であっさり粉砕して、ザップは、はぁぁと溜息をついた。すっかり冬らしく寒くなった空気の中で、その息は白い煙のようにアユの頭上を飛んだ。

「12月に入った途端、嫌がらせみたいなことが増えましたね……」
「結界ちゃんと効いてんのか? その嫌がらせにひっかかってんのおめーだけじゃねぇかよ」

HLに戻ってきてすぐ”出張”を再開したアユとザップだったが、何故か今回は2ヶ月前の様に上手く事が運ばなかった。しかも、生命の危機にさらされるほどの危ない目に合うわけでもなく……ロケット花火に追いかけられたり、巨大なネズミにローブを齧られたり、小さなサンタに髪を掴まれたりしているのだ。”最弱の結界”で防げるレベルである筈のものばかりなのに、どうしてこんな事になっているのか、アユ自身もわかっていないのである。

「何か異変でもあったんですかね? 私に」
「知るかよ! ったく……お前になんかある度にめんどくせぇ役目請け負ってんのは俺だかんな? このクソ寒い時期にスターフェイズさんの氷の餌食になるのはもうごめんだ」

アユがローブをボロボロにして事務所に戻ったある日、スティーブンは顔を真っ青にして彼女の隣にいたザップを氷漬けにした。あまりにもほつれまくっていたため、アユ自身も怪我をしているのだと思ったらしい。ザップの護衛ミス、ということで罰を与えたつもりだったのだろう。

「あ、スティーブンさんといえば」
「は? ンだよ」
「最近体調悪そうですよねー。絶対熱ありますよアレ」

熱、という言葉にぎくりとしたザップに気付くことなく、アユは彼の腕を引っ張ってドラッグストアに向かった。
スティーブンは、いつも顔を赤くしている。勿論アユの前だけで。しかしその原因を生み出している当の本人は、自分が元凶なのだということをまるでわかっていない。アユが飛行機の中で悶々と考えていたことは、一眠りしたらほぼ全て彼女の脳内から消え去っていたのだ。HLに着いてからは、いっそ清々しい位の鈍感っぷりを披露し、レオとザップからは逆に尊敬の眼差しを向けられていることを、アユは知らない。ザップは、3週間も熱発してたら流石の番頭でも脳煮崩れんだろ! と心の中でツッコミを入れながら、近場のドラッグストアに引きずり込まれていった。
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