Magic Green!!!本編 | ナノ
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08.

11月の飛行場。夏休みの時ほどの人の多さではないが、半ば観光地化したHLを一目見たいという世界中の物好き達が集まっているエントランスで、レオナルドとザップは2ヶ月前に別れた少女と再会すべく、キョロキョロとあたりを見回していた。

「あ! いましたよザップさん! ほら!」
「おーおー、久々に陰毛糸目よりもチビな奴見たな〜」
「年下の女の子よりでかくてもさほど嬉しくねぇっすよ」

似たようなこと、4ヶ月前にも言ったなぁ。レオナルドはそんなことを思い出しながら、こちらへ歩いてくる栗色の髪の少女に手を振った。

「アユ!」
「レオさん! ザップさん! お久しぶりです!」

2人を見つけてぱっと笑顔になったアユは、赤いトランクといくつもの紙袋を提げて、ぽてぽてとレオが手を振っている方へ駆け出した。

「うっわ〜、またすっごい大荷物だなぁ」

お土産です! と紙袋を掲げてみせて、アユははにかんだ。今回は彼女自身がチョイスした物をメンバーに振る舞うらしい。

「よーぉチビ、ちったぁ背ぇ伸びたか?」
「わ! ちょっ、会ったハナから髪ひっぱらないでください!」

ザップが大股でアユの前まで歩き、ふわっとおろされた髪を鷲掴んでぐしゃぐしゃといじりはじめた。抵抗しながらもどこか楽しそうな顔をしているアユを見て、レオナルドにも自然と笑みが零れた。

「アユ、帰ってきてくれて嬉しいよ。なんか色々…君がいないと大変だったから」
「え?結界に何か異常でもありましたか?」

あー、いやそうじゃなくて……と言葉を濁すレオナルドを足で蹴飛ばして、ザップがアユのフードを掴んで引きずりながら歩き始めた。

「レ、レオさん大丈夫ですか! ちょっと、ザップさん!?」

レオナルドの言葉の意味も、ザップが強引に引きずる理由もわからないまま、アユは関門を抜けて異常な街へと足を踏み入れていった。


「アユっちー!! 会いたかったわ!」

事務所に着いた途端K.Kに抱きつかれたアユがバザバサと落とした紙袋をレオナルドが広い、ザップがトランクを抱えてソファーまで運んだ。

「け、K.Kさん、お久しぶりです……えへ」

デシャヴを感じながら、アユは事務所の中をぐるりと見回した。家具なんかは殆ど変わっていない。窓際の花瓶がシャープな形のものに替えられているくらいだ。クラウスとギルベルトは、アユが到着する頃には別件でモルツォグァッツァにいるのだと、先日テレビ越しにスティーブンが教えてくれていた。そんな彼は……アユの目線の先のデスクの前で、立ったままこちらを見ている。

「スティーブンさん、ご無沙汰してます。ただいま帰りました」

なんでこっちまで来ないんだろう。とかそんなことは考えることもなく、アユはふにゃっと笑ってお辞儀した。するとスティーブンは、何故か顔を真っ赤にして目を細めて笑い返してきた。

「ああ……おかえり。アユ」
「……熱でもあるんですか? 顔真っ赤ですけぶっ」
「アユっち〜!! 今回はアナタがお土産チョイスしてくれたんでしょ!? ね! どんなのか私、早く見たいわ〜!」

アユが言葉を言い終えないうちに、彼女を抱きしめていたK.Kの腕にぐっと力が入り、そのままぐるぐると振り回された。

「わーっ! K.Kさん! ちょっと! アユ気絶しちゃいますってば!」

下ろしてやってください! とレオナルドが止めに入るが、K.Kはキャーと叫びながらアユを離さない。わぁわぁしている3人を横目に、ザップがデスクの方を見やると、そこには右手で自分の口元を覆っているスティーブンがいた。耳まで真っ赤にしている。

(オイオイオイオイ……)

うげぇ、とあからさまに嫌そうな顔をして、ザップは頭をかいた。ビンゴ、予想通り……最悪だ。

「マジで大勝負に出なきゃなんねぇとは……」


「よーよーチビ、日本のイマドキ女子高生の流行りとかあったらこのザップ様に教えろよ」
「き、聞いてどうするんですか。愛人さん達になんかするんですか」
「はぁ? ジャパニーズのお子ちゃま〜な流行りで満足するような女は俺の周りにはいねぇ。けど悪くねぇな……オラ早く言え」
「は、腹立つなぁ……えっと……壁ドンとか、ですかね?」
「ほーう」
「あ! あと顎クイとか、流行ってましたね〜友達が彼氏にしてもらって、キュンとしたらしいです」
「ほうほう……!」
(これは使える!!)

To be continued…
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