Magic Green!!!本編 | ナノ
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07.

予想外に早く出席日数がたまり、アユはHL近郊着の飛行機の中で、緩やかな眠りの波に乗りかけていた。

(まだ11月……)

1ヶ月半と少し。実際の予定より短くなったその期間は、それでも長く感じられて、日本に帰って半月経った頃にはあの喧騒が恋しくなってしまっていた。スティーブンは最後まで数日に一度、下手したら3日連続でテレビの前に座っていたし、その度に戻ってこいと促されるものだから、先生に確認を取ってみたら本当に出席日数がちゃんとたまっていて。それを真っ先に報告した時の彼の顔は、忘れられない。

(すっごい、喜んでくれてたのかな?)

それまで笑っていても死んだような顔をしていたのに、ぱあっと目を輝かせて、ちょっと間が抜けているようにも見えるくらい口元を緩めて。「それはよかった」と、目を細めて笑うスティーブンを直視できず、アユは誤魔化すように微笑んで俯いていた。

(……ダメだ〜……)

スティーブンさんは上司。牙狩り。男前。
私は、部下。未成年。チビ。ぺーぺー魔導士。

(無理だ!!)

スペックがまるで違う。期待してしまうだけ無駄。そもそもこんなチンチクリンに良く思われたって、スティーブンさんも嬉しくないだろうし。どっちも幸せにならない。

(友達、ですらないし)

アユには誰かと付き合うとか、告白するとかされるとか、そういう経験はまるでない。日本にいる頃は修行ばかりで、学校ではどちらかといえば地味な方だった。華やかに青春を謳歌する同級生達を横目に見ることもなく、ただひたすらにグルズヘリムの短所の克服に奮闘し、守護魔導を頭に叩き込み続けていた。
そんな彼女の中では「知り合い→友達→恋人」という風に、恋仲に発展するまでには順番があるのだと決まっており(真面目か!と友人に言われた。本人は大真面目である)、スティーブンは『上司』いわば「知り合い」。そこを飛び越えて告白するという暴挙に出る気は、さらさら無い。

(でも、お友達になりましょう〜なんて言うタイミングも、無いね)

無理じゃん! あれ? そもそも私は、スティーブンさんの事が好きなんだろうか。気付けばアユは、先程までの眠気を吹っ飛ばして、考え込んでいた。好きなのかどうかがわからない。スティーブンさんはかっこいいから、優しいから……それだけ?
アユは超が付く恋愛初心者であって。
あんな素敵な人に微笑みかけられれば、簡単に好きなんだと”錯覚”してしまうんだ、きっと。そう簡単に片付けて、アユは今度こそ本当に眠りに入っていった。
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