Magic Green!!!本編 | ナノ
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04.

何とか順調に、日々は過ぎていった。
天高く馬肥ゆる秋、通りの木々は紅く色付き、肌寒い空気がアユの髪を揺らした。日本は本当に平和で、安全で。高校では前と変わらず、同じ友人が彼女を迎えてくれた。お土産が普通のお菓子(色んな店を渡り歩いてやっと見つけた安全そうなクッキー)だったことに驚かれたり、やれイケメンはいたか美女はいたかと問い詰められたり。この2ヶ月の間に、友達の1人に彼氏ができていたことには、とても驚いた。しかも、水泳部、学校イチのイケメン。

「すっごーい! どうやって射止めたの!?」
「アタックしまくったの! そしたら彼が振り向いてくれて……」

恋バナに花咲かせるなんて、女子高校生らしいなぁ。のんびり過ぎていく毎日を、幸せに過ごしていたアユだった。のだが。

『アユ、出席日数はたまったのか』
「い、いえ〜……あと1ヶ月あるので……」

めっちゃ渡米を催促される。ライブラの副官、スティーブン・A・スターフェイズに。しかもほぼ毎回、”間接特殊型”を張るためにテレビの前に座ったら、画面の向こうから死んだような顔でこちらを睨んできている。

「……っていうかスティーブンさん! そっちは夜中の3時じゃないですか!? なんでいるんですか!」
『仕事がたまっててね。徹夜三昧なんだよ、最近』

ははは、と力なく笑う彼が、なんともいたたまれなくなって、アユは画面に顔を寄せた。するとスティーブンは、ちょっとびっくりした様子で、顔だけひっこめて後ろにのけぞる。

『な、なんだい?』
「なんだい? じゃないでしょ! 挙動不審になってますよ……寝てください! ていうか仮眠室に入ってもらわないと、結界が張れません!」
『悪い悪い、でもそっちはまだ夕方だろう。時間があるなら、話さないか? 僕も気分転換がしたい』

そう言われると、断れないのがアユである。可哀想に、この上司は日々書類仕事に追われ、必要があれば前線にも赴き、身も心もボロボロなのだろう。それに画面越しにあんなに整った顔で見つめられては、Noなんて言えるはずがない。

「うーん、じゃあ……10分だけ」
『……30分』
「わ、わかりました! 30分!」

スティーブンとの雑談は楽しいから、こうは言っても結局1時間は話し込んでしまう。そしてこんな日が、3日に一度はある。アユはいよいよ、彼のことを本気で心配しはじめていた。

「……なに、どしたの? アユ」

昼休み。教室で机に頭を押し付けて唸るアユに、少し引いている様子で友人が話しかけてきた。水泳部の彼氏がいる女の子だ。

「ん〜? なんか、向こうの……」

自分が魔法使いであることと、ライブラに所属していることは、秘密。

「こ、高校の先生が、早く帰ってこい〜って」

アユからすればスティーブンは、学校の先生とさほど変わらない。年が若くて、話しやすい理系の臨時講師……というイメージだ。いい感じにはぐらかせた気がして、アユはちょっと笑った。

「え〜何それ、イケメン教師?」
「まぁ、それはそれはかっこいいよ」

アユは、スティーブンほど全てがパーフェクトな人間を見たことがなかった。スラリと背が高く脚も長く、完璧に整い尚且甘いマスク。頬の大きな傷や首元からチラリと見える刺青さえも、彼は魅力の1つにしてしまう。

「ほんと!? ハリウッドスター張り!?」
「うん、それ以上かも。なんていうかちょっとラテン系で……」

なんで写真撮ってこなかったのー!! と怒られたが、そこは上手くかわしておく。個人が特定できそうな傷のことは伏せて、大まかな特徴を一通り話して周りを見ると、大勢の女子がアユを取り囲んで話を聞いていた。

「で、なんでその超イケメン先生が、アユに”早く帰ってこい”なんて言える訳? 電話番号交換してるの?」
「い、いや、テレビ電話みたいな……」

うそー!! と叫ぶギャラリー達。アユは、日本支部に押しかけられたらどうしよう……と、テレビ電話について話したことを後悔した。が、話は別の方向に逸れた。

「頻度は3日に一度。連絡を取ってる時、向こうは夜中の3時なのに! しかも……テレビ電話!!」
「え、え? 何? どうしたの?」
「絶対その先生、アユのこと好きよ!」
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