Magic Green!!!本編 | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
02.

スティーブンとザップの”パートナー争奪戦”は、日々熾烈を極めていた。

「ザップ、報告書はどうした、出せ」

スティーブンがこう脅せば、大体の場合は事務所から逃げ出すか、寒さに凍えながら必死で仕上げるかしていたのだが。

「へーい」

ぺらり、とスティーブンのデスクの前に、先日の臓器密売組織へ乗り込んだ時の報告書が置かれた。

「…………」
「何すか。俺が出しちゃわりーのかよスターフェイズさん」
「……いや」

この2人、普段の会話に殺気が漂っていようが何だろうが、やはりプロではある。仕事は仕事、あれはあれ、これはこれと、結構分けて考えることはできているようだ。

「ザップ、42街区だ。厄介なことになる前に行け」
「まーた食人組織っすか、しかもエイディ派ぁ? チッ……おいレオ! 行くぞ!」
「おいーっす」

軽く指示をすると、文句を垂れながらもバタバタと大袈裟に音を立ててザップとレオナルドは出ていき、事務所に残ったのはスティーブンとK.Kのみになった。

「スティーブン先生?」
「……なんだい、K.K」
「まぁーだ、ティーンで爆笑したの、怒ってるわけ?」
「……別に怒ってはいないさ。僕はよっぽどの事がない限り、女性には腹を立てない」

スティーブンは恋というものを知らない。その恵まれた容姿のおかげで、言い寄ってくる女性は吐くほどいた。本当のティーンの頃はぶっちゃけ修行三昧で、恋だの愛だのというものに付き合うことさえ面倒だった。そして、ある程度大人になってからもそれは変わらなかった。ただ、手段として。この顔と体、振る舞いを、使っていただけだったのである。

「アンタは、悔しいけど経験値だけはあるのよね……悔しいけど!」
「……はは」

正直、どこがどう転がって彼女の事を好きになっていたのか、よくわからない。なぜならスティーブンは、どうしたら恋に落ちるのか、どういう気持ちになったら、あ、これは恋なんだと気付くのか、全くわかっていないからである。

「好きは好きなんだろうけどさ……」
「は?」
「なんで好きになったかが、わからない……」
「………」

K.Kは眉間をおさえた。手がかかりすぎる三十路。なまじ女性経験が豊富なだけ厄介だ。

「K.K、君は確か、『出会った次の日から』僕がアユの事を好きになったって言ったよな……なんでそう思うんだ?」
「……スカーフェイス、あんたって結構……本命の前ではわかりやすすぎる質なのよ、きっと」
「?」
「だーかーらー!! 何でか知らないけど、アユっちがHLに来てすぐはなんやかんやと優しくしていたアンタが、3日目になった途端にそっぽ向いちゃって……そういう所が、」

ちょうど今、初恋にどぎまぎして好きな女の子と距離をとろうとろうとしてる、うちの次男と全く一緒で……

K.Kの次男は、8歳くらいだったか。僕は三十路。所謂おじさんだ。間違いなく、アユから見ればおじさん。8歳の息子と、職場の同僚(おじさん)の行動が、全く同じものなのだと気付いた時のK.Kの気持ちを察して、スティーブンは右手で顔を覆った。

「……なんか、ごめん。君には色々迷惑をかけたな…」
「アンタって……やっぱりティーン以下ね、恋愛に関しては」
prev next
top