Magic Green!!!本編 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
第2部

08 Screen

01.
関門までザップとレオナルドに送って貰い、そこからは赤いトランクとお土産を抱えて空港まで歩く。2ヶ月前、ここを通ってこの街へやって来たあの日が、昨日のことのように思える。HL、そしてライブラで過ごした毎日は、忙しくて大変で、楽しかった。こんなに刺激の強い2ヶ月を、アユは送ったことがなかった。

「寂しくなるなぁ……」

別に、もう二度と帰ってこない訳じゃない。関門を通り抜けて、アユは霧烟る街の方を振り返った。あの向こうに、ドタバタでハチャメチャで、異常が日常の毎日を駆け回って生きている人達がいる。
これから、また2ヶ月。空を仰げば、HLからは見ることができなかった澄んだ青い空が広がっている。その空が、大好きだったはずだけど。霧のベールが物足りない気がして、アユは目線を前に戻した。


気付くのが遅すぎた。
スティーブン・A・スターフェイズは、自分のデスクに肘をついて頭を抱えていた。アユのことが好きなんだと自覚した頃には、彼女は日本行きの飛行機に乗っていて。アピールもアタックもできない。というか純粋に、好きだから会いたい。

「ウキュ?」
「ソニック……ソニック……ウッ」

アユのいないライブラで、彼女に最も近い生き物……小さくて白くて可愛い、ソニック。いや、アユの変わりになる者なんて、いないけど。
三十路のおじさんが、音速猿に癒され慰められて、半ベソをかいている。こんな姿は、誰にも見られる訳にはいかない。勿論今は、事務所には誰もいないし、近いうちに誰か来る予定もない。いや、希釈したチェインがいるかもしれないな……スティーブンはキリッとしたいつも通りの伊達男の顔に戻した。
今生の別れではない、あと2ヶ月したらアユは帰ってくる。そしてまた、俺に笑いかけてくれるのだろう。

「正念場だ……」

とりあえず、彼女が帰ってくるまでに、あのクズと決着を付けなければ。
prev next
top