10.
ザップさんて、アユのこと大好きでしょ。
「……はいぃ?」
「とぼけても無駄っすよ。だからあんな事言ったんでしょ、そしてこれからもなんかするつもりっしょ」
公園のベンチに腰掛け、ザップとレオナルドは、目の前でパンくずを食らう無数の鳩や異形の鳥を見下ろしながら、ぐうたらしていた。2人が座るベンチからは、霧の向こうの飛行場がよく見える。
「……レオ」
「うす」
ありゃあ番頭、マジだぞ。
ザップはぼそりと呟いた。風がレオナルドの前髪を揺らし、彼は俯くように頷いた。
「あのチビ……アユはまだだな」
「っすね」
沈黙。
はぁ〜、と、2人同時に息を吐いた。数羽の鳥が、飛び去っていった。
「とりあえず、姐さんが番頭を飲みに誘ってたっつーことは……第一関門は突破だな」
「アユが帰ってきてからが問題ですよね」
「このザップ様の、一世一代の大勝負が待ってんのな」
こえー、多分死ぬわー、ザップはぐでっとベンチにふんぞり返って、足をバタバタさせた。それに驚いて、殆どの鳥が飛び去っていった。
「でも大好きなんでしょ」
「……そりゃおめーもだろ」
「やるしかないっすね」
「まーな」
HLに広がる、10月の空。
相変わらず霧っぽくて、ぼんやりしている。肌をなでる風が、やがて訪れる冬の冷たさをはらみ始めていた。2人は、全ての鳥がが一羽残らず飛んでいってしまうまで、この街を離れた少女のことを考えていた。
To be continued…
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