Magic Green!!!本編 | ナノ
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07.

送られた資料に一通り目を通して、メンバーは、”MG試薬”とやらの内実と安全性をしっかり確認した。ハインはアユに負けず劣らずの真面目で、尚且天才、秀才、研究熱心、用意周到……そしてアユを救いたいという気持ちが、誰よりも大きかった。

「……成程、よく理解した。君のその”MG試薬”は、信頼に値する薬の様だ」
「分かっていただけて光栄です、ミスタ・クラウス……ですが、話はまだあります」

そこまで言って、ハインは右手をアユの肩に置き、左手で小瓶を持って、話し始めた。

「MG試薬の効果は、恐らく予想に反することなく忠実に表れます。しかし、どんなに自信があっても、これはただの予想。最悪の事態を免れる為に、試薬を飲んでいる間も、アユには皆さんの前では魔法は使わないでおいてもらいます」

ハインの言う最悪の事態とは、おそらく薬が効かず、アユがそれに気づかずに魔法を使い、メンバーがバタバタ倒れる……といった場合のことを指しているのだろう。

「でもそれじゃあ、本当に”短所克服期間”が存在するのかさえ、わからない……そこでだ、アユ。君が使える”最弱の魔法”は?」
「え? えーと……ちょっとだけ、風を吹かせる……とか?」
「よし。それじゃあ……ここからは完全に”お願い”です、みなさん」

ハインは今度は、事務所にいるメンバー…特に牙狩り達の顔を順に見て、頭を下げた。

「アユの最弱の魔法を、受けてくれる牙狩りが必要です。頻度は、最初は数時間に一度……体調が悪くなったら、そこまで。結果を僕の研究所に送ってもらいます。その後に試薬を服用したら、半日に一度、1日に一度と、期間を少しずつ開けていきます」

協力してくれる牙狩りがいなければ、この話はそこで終わりだ。頭を上げたまえ、とクラウスが声をかけたが、ハインはずっと、そのままの姿勢で話し続けた。

「僕は、グルズヘリムを救いたい。その為には何だってしようと決めました。命だってなげうつ……それが、果ては人類の為になるのだということを、知っているから」

グルズヘリムが牙狩りと共に前線に立つ日が来れば、それは人類の勝利への、大きな飛躍になる。そしてそれ以前に、妹同然の少女を、救いたい。まっすぐ、ただまっすぐ。その姿はどこぞのリーダーに、よく似ていた。

「OK、僕が引き受けよう」

嫉妬とか、思慕とか。そういう気持ちがあったのだという事に、その時は気付いていなかった。ただ、このロロカリアンの若者2人に突き動かされるように、スティーブン・A・スターフェイズは手を挙げていた。
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