Magic Green!!!本編 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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06.

タンドリーチキンのようなものは割と強情で、ザップとツェッドはちょこまかと飛んでは逃げ、ビルに衝突していく肉塊と未だに奮闘していた。

「……だいぶ厳しそうですね」
「でもあの二人なら、絶対になんとかするよ」

レオは自信たっぷりにそう言って、非戦闘員の俺達は大人しくここで待っとこう、とサブウェイの周辺をてくてく歩いた。彼が一歩踏み出した時、チリッと感じた気がして後ろを振り返ると、いつの間にかアユとの間に5mの距離が出来ていた。

ん? 俺の特殊体質はなんだっけ?

ヒュウウウウウ、と背後から何かが飛んでくる音が聞こえて、恐る恐る前に向き直る。一瞬視界が真っ白になり、「ぶへっ」と間抜けな声を出してレオは何かにはじき飛ばされた。

不幸吸収体質。色々ピンポイントすぎるだろ!!

降ってきたのはザップだった。視界が真っ白になったのはアンタの服のせいか。レオは盛大に地面に叩きつけられたが、ザップはレオと、血法をクッション代わりにして華麗に着地して見せた。

「あンのタンドリーチキンめぇ〜〜〜!!」

この俺様を馬鹿にしやがって!! と吠えるザップは、現在進行形で血法を使用している。アユとの距離、3m。

(まずい!)

アユは咄嗟に意識を集中させ、結界の”解除”に取り掛かった。眉間にシワを寄せて、ぐぐぐぐ、と体を縮めるように力を入れていく。するとパン! と音を立てて、アユのふわふわした栗色の髪はみるみるうちに黒く染まっていった。

「うぶ、ザップさんひでぇ……末代まで呪ってやる」
「陰毛離れてろ! 肉がこっち来るぞ!」
「斗流血法、シナトベ……!」

兄弟子が飛ばされた方へ向かうタンドリーチキンを追いかけて駆けつけたツェッドが血法を発動させ、三叉槍でその心臓をついに仕留めた。ギュルルルルルル、と醜い悲鳴を上げて、肉塊が崩れ落ちる。

「貴方は! 油断大敵という言葉を知らないんですか!」
「うるせーよ! これも作戦だろさ! く! せ! ん! お前をたててやったんだよ!」
「まず俺に謝ってくださいよザップさん! この程度の傷な自分を褒めてやりたいわ!」
「あ、あの……」

口喧嘩のオンパレードを控えめに静止して、黒髪をふわりさらりと流した黒い瞳の少女が、恐る恐る口を開いた。

「も、もう、終わりましたか……?」

長い沈黙。

長い長い沈黙。

「誰だ……?」

ハッとしたのはレオナルドである。

「もしや、あの……アユ!?」
「あっ、はい、そうです!」

ザップとレオは驚愕の雄叫びをあげた。
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