Magic Green!!!本編 | ナノ
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03.

「お前、バカか! スティーブンさんにサブウェイのオツカイ頼まれる時はメモ帳必須だっつーの」

このバカ、バカ、バカ! とバカ三連発をアユに放ったバ……ザップは、走り書きされたメモ帳に目を落として盛大に溜息をついた。 

「今回はいつになく長かったっすね……呪文? ってか何書いてるかすらわかんねぇ!」
「読めないですよコレ……どうしてくれるんですか」

レオとツェッドも怖々とメモ帳の中を覗きこみ、やれどうしたものかと肩をすくめた。アユは、注文が普段より嫌がらせめいていることを知り、やっぱり嫌われているのか、としょんぼりしている。

「ごめんなさい。きっと地雷踏んじゃったんですね、私」
「あんなふっつーの会話で地雷踏んじまうんじゃ命がいくつあっても足らねぇよ」

ザップが珍しく人を慰めているのを貴重な宝物へ向ける眼差しで見つめるレオナルドに、お前大概にしろ! とザップは掴みかかった。その間にツェッドもアユのフォローに入る。

「最近特に忙しいみたいなので、スティーブンさんもピリピリしてるんじゃないですか? アユさんのせいではなさそうですし」
「いや、でも最近、なんか避けられてる気が……もう少し配慮するべきでしたね、そういう所も」

え、とツェッドがその言葉に反応し、レオとザップは取っ組み合いを中止した。一拍、二拍、三拍おいて、ブブッと吹き出したのはレオナルドである。

「え!? ここ笑うところですかレオさん!?」
「あっはっはっは!! はぅ……いや、そんな風に滅茶苦茶上司の機嫌気にするあたり、日本人なんだなーと思って」
「確かによー。てかチビお前、ちょっと髪色明るすぎねぇか? 見た日本人には見えねぇよな」
「マダム・ディートリッヒはドイツの方ですけど、黒髪でしたもんね」

この国には上司への配慮とか他者への思いやりの精神とか、そんなものが一切ないのか! とアユはツッコミたくなったが、髪色のことを言われるとそういえば、これの事を誰にも言ってなかったなぁと思い出した。

「あ、これは地毛じゃないです」
「は? まじかよ」
「実は、心臓の鼓動とかと同じように自律性を持った結界を常に全身に張ってるんですよ、頭からつま先まで、ラップみたいに。これはグルズヘリム結界の中でも最弱のもので、かなり長い間効力が続きます。髪が栗色なのはこの結界のせいなんです。この結界を外したら、髪も黒くなりますけど……多分この街では5分も生きられません」
「なるほど。じゃあ、今アユさんは最弱とは言っても超高度な保護スーツを着てる状態って訳ですか」

まぁそうなんですかね〜とツェッドにのんびり答えるアユを見て、そうかこれか、とレオナルドは初日彼女と二人で街を歩いた時のことを思い出していた。おそらく彼女の無意識の内に働いている保護魔導は、彼女自身の肉体を守るだけでなく、半径数メートル以内位の範囲で微弱(周囲の人間が”自身の不調に気付かない”レベル)ながら働いていのだ。つまり彼女は、それ程までに弱い力でも、ここ一体を比較的安全に保つことができているということ。

いややっぱり、アユってすげぇ。

「ん? てことはアユ、その力を何とかしてグルズヘ……」

レオが何かを言いかけた瞬間、四人の頭上にそびえていたビルの最上階が爆散した。突然のことでアユはひゃっと声を上げ、ザップ、ツェッドが上の様子を一瞬で確認、まずいということを察知し、レオとアユをそれぞれひっつかんで駆け出した。

「こんな飯時に、どこの馬鹿テロっすか!?」
「陰毛様は黙って担がれとけ! テロはテロでもありゃあ……そうだ、飯テロだ!」

飯テロって美味しいものがいっぱいな事じゃないんですか!? と思ったが、ガレキの山が雨あられと降り注ぐ中を難なくくぐり抜けていくザップとツェッドにだいぶ恐れおののき、アユは訳も分からぬまま安全な場所へ運ばれていった。
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