Magic Green!!!本編 | ナノ
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第1部

01 Welcome to HL!!

01.
異界と現世の交わる街「ヘルサレムズロット」。
−−霧煙るこの魔封街にそびえるとあるビルの最上階。クラウス・V・ラインヘルツは窮屈そうにも見える事務所のソファに腰を下ろしている。世界の均衡を守るべく暗躍する秘密結社”ライブラ”きっての実力者兼リーダーである大男は、ただでさえ強面のその顔をより一層険しくさせている。

その向かいに腰掛け、長い脚を組んでやや呆れた用に右手の資料に目を通すのはライブラの副官、スティーブン・A・スターフェイズ。彼は先日の戦闘で大怪我を負ったものの、本来なら1ヶ月入院の所を半月で治してつい先程退院し、本部に顔を出していた。クラウス程とは言えなくともやはり多少思うところがあるらしく、はあ、と溜息をついて呟いた。

「シャミアニード、か。またえらい所から連れて来たもんだ」
「うむ。私も一度お断りを申し出たのだが、マダムがどうしてもと仰るので」
「へぇ…君が断りを入れるとは、今回こっちに派遣される魔導士様は、相当の厄介者かな?」
「いや…彼女はとても、HLには不釣り合いな程の、その、可憐な少女で」
「えっ…」

なるほど、そりゃあ胃も痛める訳だ。
そう納得してぱらり、とファイリングされた資料のページをめくると、もう数時間後にはここに到着するであろう魔導士の顔写真が。魔導士…? 魔法少女の間違いではなかろうか。

「まぁ確かにこれは…というか、未成年じゃないか、この子」
「いや。つい先日18歳を迎えたらしい。シャミアニードでは、国籍に関係無く18歳で一人前の魔導士として扱われる」
「あぁ、そういえばそうだった…」

本日二度目の溜息をついて、もう一度資料の写真に目を落とす。栗色の髪をふわりと流し、緊張の色を隠せない様子でぎこちなく微笑む少女は、髪より幾分か濃い茶色の目を細めてこちらを見ている。国籍は日本、ということは自国ではまだ酒も飲めないのか。厄介だ…思っていた以上に。

「クラーウス。なんでまた君ってば、こんな爆弾みたいな少女を…」
「む…しかし彼女の守護魔導は、マダムが天賦の才能だと認める程の物であって」
「それは彼女が”グルズヘリム”だからだろう?いや、というかそれが一番大変かも…」

大の大人が二人して、頭を抱える。今この事務所に二人とクラウスの執事であるギルベルト以外の人間がいなくてよかったなと思うほど、二人は険しい顔をしていた。

「とりあえず、ザップと少年が空港まで彼女を迎えに行ってるはずだ。対策は彼女が到着して、実力を僕達の目で確かめてから練るっていうことでどうかな」
「ああ、そうしよう。マダムも彼女が到着する頃にはこちらに向かえるそうだ」
「え?マダムって…シャミアニードの?今はベルリンにいらっしゃるんじゃなかったか?」
「うむ、そのようだから、彼女が到着する頃にあちらを出て…」
「あああ…」

本当に、慣れない。生粋の魔法使いという者には、未だに。
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