Magic Green!!!本編 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
03 Barrier

01.
予定通りに始まったライブラにとって毎度お馴染みのミーティング。今回の内容は、今週中に叩かなければならない臓器売買を繰り返している悪どい慈善団体(矛盾を感じる響きだが)の情報共有と、ドバイの大富豪の娘が誘拐された先がHLだと判明したこと、それとエギンウイルスについてだった。

「とりあえず悪どい慈善団体には、ザップ、ツェッドで乗り込んでもらう。おい、嫌そうな顔するんじゃない」
「ま〜た魚類とっすか!? 信じらんねぇ、番頭」
「無駄口叩かないでください。あなただけが嫌な訳ではないんですから」

ザップが珍しく間に合い、全員が揃ってのミーティング。話していることも秘密結社らしくて、アユは改めてここがライブラであることを実感した。

「大富豪の娘さんは……チェイン、おそらく”あそこ”にいるだろうから、今度建物の設計図を渡そう。情報を集めてくれ」
「了解です」

チェインは先程到着するや否や、アユのいる給湯室へ駆け込み、自宅に届いた大量の焼酎のことへの礼を言った。芋焼酎、麦焼酎、米焼酎……もちろんどれも日本限定。これはアユのチョイスではなく、チェインの顔写真を見たシャミアニードの男性陣が日本各地から取り寄せたものであったのだが。

「そしてこれが今日の本題だ……エギンウイルス」

スティーブンはそう言って、近くにあったホワイトボードに何やら写真を貼り付けていった。

「うげ、きめぇ。随分不細工なウイルスっすね」

ビヨンドに慣れきっているザップが言うのもどうかと思うが、確かにこのウイルス、長時間見ていたいとは思わない形をしている。蜘蛛のように四方に鞭毛を広げ、中心の丸い点のような本体からは赤いつるりとした目玉のようなものが覗いている。

「昨日、シャミアニードから送られてきた資料だ。みんなも目を通してくれ」

一人ひとりに配られた資料には、エギンウイルスの詳細と、研究内容等がびっしり書かれていた。アユも注意深くそれらを読み、そして「現時点での対策方法」という欄に目をやった。

「昨日あらかた話は聞いていると思うが、エギンウイルスを殲滅することは、今はできそうにないらしい。とりあえず対策としては、”グルズヘリム”による結界を張るしかない」

メンバーの視線が自然と、アユに集まる。

「……アユ」
「はい」
「事は急を要する。頻度なんかは僕達には分からないが、出来れば今すぐにでも結界を張ってもらえると助かるよ」

そう言われては、やるしかない。いや、元々張る予定ではあったのだけど。わかりました、と一言答えて、アユはグルズヘリムの使う守護魔導についての説明を始めた。

「グルズヘリムの結界は、ロロカリアンや術士協会”LEOS”のそれとは、大きく異なります。建物や地域の維持や防壁の代わりに使われる所は同じですが、成分と張り替えの期間が、グルズヘリムの結界の方はより”血”を使い、そして短いんです」
「具体的には、どれくらいの頻度で張り替えが必要なんだ?」
「短くて数分、長くて1週間です。例外もありますけど……エギンウイルスは術式を数週間で食い破りますから、グルズヘリムの結界に穴があかないのは、常に張り替えを行っているからなのかもしれないです」
「おい待てよ、それじゃあそのロロなんとかってのも、毎日結界を張り替えればいいじゃねぇの」

珍しく意見したザップの隣で、レオナルドがロロカリアンっすよ、とツッコミを入れる。

「ロロカリアンの結界は、一度張ってしまえば短くて2週間、長くて数ヶ月は手出しできないんです。上書きするように結界を張っても、すぐに元あった結界に吸収されてしまいます。でもグルズヘリムの結界は、短いスパンでその効力を無くしてしまうので、その都度張り替えが必要なんです。ロロカリアンの方は弱く長く、グルズヘリムの方は強く短くって感じです」
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