Magic Green!!!本編 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
09.

緑髪の彼女は、自身をオリビア・フィネガンと名乗り、同時に秘密結社シャミアニードの構成員であることを告げた。

「これ、構成員バッチね。HLにいる構成員は勿論、全員『アユ・マクラノ』を知ってるわ」
「そ、そうなんですか……」
「当然よ! あなたはいろんな意味で、有名人だから……ああでも、どうしてひとりなの? 護衛は……」
「最弱の結界のレベルを、少し上げてるんです。ライブラとシャミアニード双方から許可を貰いました」

なるほど〜、とオリビアは相槌をうって、それからふ、と笑った。

「?」
「いやあ……どんな女の子なんだろうって、ずっと考えてたから……なんだか、予想以上に真面目な日本人って感じね」
「えっ……だ、だめでした?」
「いやいや! だめとかそんなんじゃなくって……うん、真面目だけど、思ってたほど暗くない」
「くらっ……私ってそんなイメージなんですか……!?」
「うーん、まあ、ね…申し訳ないんだけど、外からも身内からも、色々言われてるのを知っているのよ。私もそうだったから、それよりひどく言われてる年下の女の子って、きっと辛いだろうなあって」
「……っ、ということは、オリビアも……?」

最後の方は何かを思い出すかのように切なそう顔をして、オリビアは俯いた。その顔が、どこか昔の自分と重なる気がして。アユは、その後に空を仰いで口を開いたオリビアの隣で、ずっと静かに、話を聞いていた。

「この、髪の色ね。父親譲りなんだけど……父の御先祖様は、かつて『魔女狩り』を行った首謀者のひとりだったの。長い時を経て、その子孫の父と、ロロカリアンだった母は知り合って……ふたりは互いに、大昔の悪しき歴史と人間同士の醜い軋轢を断ち切る為に、結婚して幸せな家庭を築くことを誓ったそうよ」

空の向こうに、その父と母がいるかのように。オリビアは目を細めて、小さく笑った。

「そうして私が生まれた。勿論、ロロカリアンとして、正統な魔力を持ってね。そして父から、この髪の色を継いだわ。淡い緑なんて、普通の人間には出ない色よ。かつて『魔女狩り』を行った首謀者自身も、もしかしたら何かしらの力を持っていたのかも」

大昔の『魔女狩り』は、同族嫌悪の先にあったものなのかもしれない。結果、父方一族は、それから現在に至るまで、ロロカリアンに追われる身となった。その中で禁忌とも言える婚約をした両親の元に生まれたオリビアは、「ロロカリアン」と「魔女狩り一族」との、共に存在してはならない血を持つことになったのだ。

「父は一族と、母はロロカリアンと決別して、東欧の小さな村に逃げて生活していたの。私もそこで、3つになる頃までは暮らしてた」
「……じゃあ」
「本当に小さかったから、覚えてはいないわ。"どちら側"から襲われたのかもわからない……確かなのは、あの時母が、『最後の力を振り絞って幼い私をロロカリアンの保護施設に送った』ということだけ。他のロロカリアンは私にそれ以外のことを教えたりはしなかった」

そうしてひとりぼっちになったオリビアは、ロロカリアンが運営する牙狩り組織の下で育てられることとなった。

その間に彼女が何を言われ、貶され、疎まれたか、なんて。

アユには苦しい程に想像がついて、気付けば目からこぼれ落ちる涙を止められなくなっていた。

「……ごめんなさい、オリビア。辛いことを思い出させてしまって」
「ううん。私が……あなたにずっと会いたかった理由を、話しただけよ。きっと私達、いい友達になれるもの」

だから泣かないで、とにっこり笑って、オリビアはアユの肩に腕を回した。
prev next
top