Magic Green!!!本編 | ナノ
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11.

「新年あけましておめでとう。今年も諸君にとって素敵な一年になることを願って……」
「乾杯!」

新年一発目にファーストキスを奪われてしまったアユはあの後、書類をデスクに片付けてすぐに温室に向かわずベッドに直行した。目を閉じて、開けた時には朝の9時。家族や友達からのあけましておめでとうメールに目を通して、通常結界を張り、夕方になる頃に身支度を整えてツェッドと共にHLの一角、とあるビルの最上階に向かった。貸し切りバー”グランド・アルディノン”が、今回のニューイヤーパーティの会場。レオナルド曰く、肉多めのバイキング形式でお酒が美味しいお店。バーの一角が広めのステージになっているらしい。
各々がグラスを高く掲げ、秘密結社ライブラの一年に一度のお祭り、ニューイヤーパーティが始まった。

「よーよーいんもーちゃん? ついに去年も童貞スキルを捨て損ねたなぁ? 今年は卒業できるといいでちゅねぇ?」
「うるせー! 新年早々縁起悪そうな顔をこっちに向けてこないでくださいよ!」

ザップとレオナルドが口汚い罵り合いを開始し、そこにツェッドが加わって取っ組み合いが始まるのをぼーっと見ていたアユは、背後から長身の伊達男が近づいていることに一切気付かなかった。

「ハロー、アユ」
「う、わっ!」

あからさまにびっくりして振り向き、冷や汗をたらして後ずさったアユの目の前には、スティーブン・A・スターフェイズ。いつものスーツよりもさらにお高そうなドレスコードで着飾った彼は誰がどう見てもかっこよくて、アユは無意識のうちに俯いていた。

「あけましておめでとうございます……スティーブンさん」
「おめでとう。君は酒は飲めないから……ジンジャーエールは?」
「あー……い、いただきます! いただきますから!」

んー? と首をかしげながら近寄ってくるスティーブンを両手で押しのけ、顔を真っ赤にしながらアユは距離をとろうとした。スティーブンの方は、それを楽しむようにくつくつと笑っている。大人の余裕か、馬鹿にされているのか。無性に腹が立って、アユはグッ……と力を入れて睨んだ。しかしスティーブンが物怖じしている様子は一切ない。

「まだ昨日……あ、今日か……のことをひきずってるのか?別にとって食おうとは思ってないさ」

今はね。とは、心の中で言っておく。

「うっ……」
「アユもドレスを着てくればよかったじゃないか。いくらローブが正装だからって……」
「ドレスなんか持ってませんもん! あ、ありがとうございます」

ジンジャーエールを手渡されて、アユは冷たいグラスに口をつけた。スティーブンはアユとは違って、普段と何ら変わりなく飄々としている。やっぱりからかわれてたんだ。ファーストキスだったのに!一気にグラスが半分になるまで飲み干して、アユはスティーブンにむかって小さな声で恨みがましく呟いた。

「……ファーストキスだったんですよ……」

睨んだり声を低くしたりして、苛立ちを表現しているらしいが。可愛いもんだな。スティーブンはハハ、と笑って余裕たっぷりに返した。

「だろうね。見てりゃわかるっ」
「お楽しみのところ悪いけど! アユっち! こっち来なさい!」

半笑いのスティーブンの腰を蹴って現れたのはK.Kだった。赤いスラリとしたドレスはスレンダーな彼女によく似合っていて、余興係だからだろうか、ド派手な黒い仮面をつけている。にっこりと笑ってはいるが、半ギレ状態のようにも見えた。頬に怒りマークが浮かんでいる気がしたスティーブンは、笑顔をひきつらせる。

「け、K.K……! いたっ!」
「ほーらアユっち? こんな腹黒には構ってないで……貴女にはちゃーんと用意されてるものがあるわ」
「K.Kさん!? え!?」

K.Kはスティーブンの脚をハイヒールで思い切り踏んずけて、アユのローブを引っ張り人混みの奥に消えていった。

「……なんなんだ、一体……」

しばらくその先をぼんやり見やっていたが、スティーブンはその直後、いつにもまして憎しみが込められていたK.Kの蹴りと踏みの意味をなんとなく察知してバツを悪くし、肩をすくめて2人を見送った。
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