Magic Green!!!本編 | ナノ
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06.

アユとツェッドはそれからしばらくして、事務所に帰った。扉を開けたアユの元に抱きついてきたのは、黒髪を横に束ねた好青年……ハインであった。

「アユ!」
「は!? お兄ちゃん!?」

なんでもアユと入れ違いで事務所にやって来たのだというハインは、それはそれは嬉しそうにアユを抱きしめたまま振り回した。紙袋が一瞬宙を舞ったが、ツェッドがなんとかキャッチした。

「まずは退院おめでとう! もう僕が近寄っても安全だよね。そして! 君……真間隔”近距離”に成功したらしいじゃないか! 快挙だ! なんでシャミアニードに……いや僕に、真っ先に知らせなかったんだ!」
「耳元で叫ばないでハインお兄ちゃん! う、うるさい!」

アユは、興奮冷めあらぬといった感じで離れないハインを無理やり押しのけて、もう一度来客としてソファーに座らせた。

「……まずは、ありがとう。体はすっかりよくなったから、大丈夫よ。で、真間隔”近距離”…あれはBBを怯ませるために名前を使っただけで、ただのロローク。結界の中を走り回っている間に小さな魔法を散らしておいたの。それを時限爆弾みたいに発動させただけ。わかった?」

なんだ、そうだったのかとハインは肩を落とした。やはり今回彼女が使った真間隔”近距離”魔法は偽物だったのだろう。

「それで……なんでここに来たの? 退院おめでとうって言いに来ただけじゃないよね」
「まあね。”MG試薬”のことで、細かい打ち合わせがしたくて。”パートナー”は決まったらしいじゃないか」

えっ……と一瞬だけ固まって、アユはバッと後ろを向いた。確か、ザップとスティーブンが”パートナー”の名乗りを上げていたはず……アユの目線の先には、にっこり笑う伊達男。

「僕がやることになったんだ。ザップが譲ってくれた」
「す、スティーブンさん……」

なんでそんなに嬉しそうなんですか、普通嫌でしょ…

「立候補して下さる牙狩りがいることに感謝しなきゃな? アユ・マクラノ」

ちょっとだけ意味ありげにニヤリとしたハインは、スティーブンをアユの隣に呼んで実験の説明を始めた。

「大まかなことはこの前話してしいましたけどね。アユが”MG試薬”を服薬した次の日……”短所克服期間”に、彼女の風魔法を受けてもらうことになります。その間に、なんらかの身体的な害を貴方に与えてしまう可能性は無いとは言えません。一切の責任はシャミアニード、または僕が負いますが……それでも承諾していただけるなら、この書類にサインを」
「OK」

用意された書類をしっかり読むこともなくサラサラとサインしていくスティーブンを、アユは珍しいものを見るような目で見ていた。こんな牙狩りは初めてだ。しかも彼は、一度アユの魔法をまにうけているというのに。世の中には物好きもいるんだなぁ……スティーブンさんには失礼だけど。

「ありがとうございます。これでスターフェイズ氏……あなたは実験上での、アユの”パートナー”だ」
「改めてよろしく、アユ」

隣から握手を求めてきたスティーブンの手をちょっとだけ握って、アユは笑っておいた。とりあえず、実験はできるんだ。これも未来のグルズヘリム達のため。私が頑張らなくちゃ。その後も実験の詳細を一通り話したハインは、ようやく一息ついた様子で辺りをぐるりと見回した。

「……で、僕がここに来た理由はもう一つ。アユ…君と2人で話さなきゃならないシークレットなことだから、君の部屋に行ってもいい?」
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