Magic Green!!!本編 | ナノ
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04.

「まずはこれ。全部報告書なんだけど……赤い付箋は今年中に上に提出する必要があるもの。黄は来年でもいい。青は来年にしか出せない。そっちの広いテーブルに持っていって、付箋ごとにわけてくれ」

スティーブンのデスクの書類ビル群のうちのひとつ…かなり高層のそれを分けながらテーブルに運び、アユは仕分けを開始した。今日は12月30日。あと2日で何とかなるとは思えない量の書類を、スティーブン、アユ、たまたま暇だったレオナルドの3人でちゃっちゃと片付けていく。

「スティーブンさん、緑があるっす」

「緑は別件だ、俺が今すぐ片付ける。見つける度にこっちに持ってきて。あ……色を全部分けたら、今度は時系列順に並べてくれ」

チェインが人狼局から戻ってきてからは、さらに人手が増えた。仕分けは予想外に早く終わり、アユは任務帰りのツェッドと共に、大型スーパーに買出しにでかけていった。

「もう昼メシの時間かぁ〜」

肩をパキパキと鳴らして、ぐっと伸びをしたレオナルドが付箋ごとに整理された書類をスティーブンの元に運び始める。

「あ、コーヒーいります?」

全部赤です、と数百枚の報告書をデスクに置きながら、レオナルドが声をかけた。スティーブンは数枚発見された緑の書類をようやく片付け終わり、そうだな、と軽く返事をする。いつも年末は死ぬほど忙しいが、今年は何とかなりそうだ。ニューイヤーパーティまでには全てを終わらせておきたい。レオナルドが淹れてきたコーヒーを受け取り、スティーブンは一息ついた。

「片付きそうだな……ん?」

ピロリン、とデスク上のスマホが鳴った。そこには、「入口解除済 1名入」の通知が。

「K.K……いや、ザップか?」

今日は2人とも年末までに片付ける必要がある任務で動いているはずだが。スティーブンが首をかしげたのと同時に、扉を突き破る勢いで事務所に入ってきたのは……

「アユ! 真間隔”近距離”、成功したんだって!?」

ハインリヒ・ディートリッヒだった。


「後は……グードリー社のクッキーと、カエルチョコレートですね」
「カエルチョコレート!? どこの魔法界のお菓子ですか」
「こっちでは普通にお菓子ですよ。動きますけど」
「だからどこのファンタジー小説!?」

アユとツェッドは大きなカートを押しながらスーパーの中を行ったりきたりしていた。大抵のものはギルベルトが取り寄せてくれているのだが、どうしても足りなくなったり新たに増えたりする食料や日用品は、暇な人間が近くの店に出向いて買いに行くことになっている。ついでに、近場のパトロールも兼ねて。

「やっぱりまだ慣れないことが多いですね……」
「そうですか? アユさんって結構タフな方だと思いますけど……というか魔法どうたらでアユさんが驚くなんて、不自然ですよ」
「現実は物語みたいに上手くいく訳ではないので……」

こっちに帰ってきて、また歌うために毎晩温室に通うようになったアユは、ツェッドとさらに仲良くなっていた。クズザップの愚痴やら真面目ゆえの悩みやら、血法や魔法の話なんかもする。実際、ライブラの中で一番気の置けない相手はツェッドだと思っているし。だからこそ、彼のこの後の提案にはNOと言えなかったのだ。

「……アユさん、ニューイヤーパーティで歌ったり、しませんか?」
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