Magic Green!!!本編 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
03.

アユがスティーブンに手を引っ張られて車に乗せられ連れてこられたのは、HLでも比較的お高い店が集う通りのカフェだった。

「さ、座って」

テラスに用意された白いテーブルを見るに、恐らく予約席だったのだろう。車の中で何やら電話していたのはこれだったんだ。アユは言われた通りに椅子に座り、店員から渡されたメニューを開いた。

「休日なんかはココによく来るんだ。パスタがオススメだよ」
「へぇ……美味しそうですね〜」

アユの頭の中を浮遊していた"?"は、メニューに載せられた色とりどりのランチを見た瞬間に霧散した。たまにはこんなお洒落なランチも、悪くない。何故この上司と2人なのかがわからないけど。

「決まった?」
「ん〜……はい!」

アユはキャベツのペペロンチーノとレモンティー、スティーブンはサラダサンドとコーヒーを注文した。先に届いた冷たいドリンクに手を伸ばした時、アユの脳内にはまたしても"?"が浮かび始めたので、ちょっとだけ迷ってからそのモヤモヤとした疑問をスティーブンに投げかけてみた。

「あの、スティーブンさん」
「うん?」
「い、いつからその……私達は”お友達”になったんでしょうか?」

HLの中でも比較的静かなこの通りの景観を眺めていたスティーブンが、アユの方を向いてにやっとした。

「なんだ君、覚えてないのか」
「えっ」
「実はさ……僕だけが病室にいたとき、君は一度目を覚ましたんだよ。それで僕にこう言ったんだ。”お友達になりましょう”ってね」

えー! そうなの!? なんで!? なぜそんな申し出をしたのやら、自分で自分がわからない。熱のせいだろうか。

「そ、そうなんですか!? そしてそれをOKしてくれたんですか!?」
「そりゃあね、別に断る理由は無いし。友達ならランチぐらい一緒に行くじゃないか」

当たり前のようにそう言うスティーブンには何か裏がありそうな気がしないでもないが、それよりもアユは、無意識のうちにそんなことを口走っていたなんて……と恥ずかしさでどうにかなりそうな気分だった。

「よろしく。僕らはいい友達同士になるよ、きっと」
「えっと……よ、よろしくお願いします……?」

自分の言動やスティーブンの含みのある笑みへの違和感は拭えなかったが、握手を求めてきた彼にとりあえずはにかんでおいてその大きな手をそっと握った。

「あ、スティーブンさん……熱下がったみたいですね」
「! ……そうなんだよ、長い熱だったなぁ」

言われてみれば、というようにスティーブンは笑った。”友達”というステータスは、彼の心の重しをかなり軽くしていたのだ。そこまで構えることは無い。だって僕とアユは”友達”なんだ……なんと良い口実だろうか。
ペペロンチーノに舌づつみをうつ少女を満足げに見つめながら、スティーブンはこの恋愛の舵取りにようやく成功したような気がして、幸せな気分に浸っていた。
prev next
top