Magic Green!!!本編 | ナノ
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08.

「ちょえっす! 新入りさんつれて来ましたよーっ……と……?」

あまりにしんとしていたため、レオはもしかして誰もいないのかな、と紙袋の山の間から顔をのぞかせた。彼の目線の先には、それはもう鬼のような形相をしたライブラのリーダー、クラウス・V・ラインヘルツがいた。レオがひゅっと息を呑む。

「……君が新しい同志か。歓迎しよう……ようこそ、ライブラへ」
「えっ……あ、はい!」

レオの後ろで、よろしくおねがいします! とぺこりと頭を下げ、少女は自己紹介を始める。

「本日付でライブラの守護魔導士として勤務させていただくことになりました、シャミアニード1年目のアユ・マクラノです。」
「うむ。私はライブラのリーダー、クラウス・V・ラインヘルツだ」

ロロカリアンです、と言わない辺り、やはり自分でもグルズヘリムであることを後ろめたいと感じているのだろう、とブラックコーヒーをすすりながらスティーブンは目を細めた。
しかし、すごいな。クラウスのあの強面に、彼女は一切物怖じしなかった。芯が強いどうこうでどうにかなるものではない、クラウスの気迫迫る表情は生命としての本能が危険信号を出すレベルのものである筈なのに。よっぽど鈍いか、図太いか、あるいは目が悪いか。にしてもレオより小柄な女の子が、ライブラ1の大男に自ら進んで握手しにいっている。クラウスの方も、予想に反して友好的な反応に、喜びを感じているようだ。まずありえないだろうと思っていた構図が実現したことを、スティーブンは内心、自分が全治1ヶ月の怪我を半月で治したことと同じくらい驚いていた。

「あっ、レオさん、ありがとうございました……あの、ミスタ・ラインヘルツ、皆さんにお土産なので受け取ぶっ」
「ッキャーーーー!!!」

レオナルドがテーブルに下ろした紙袋の山の説明をしようとしていた彼女に、K・Kがタックルをかましてそのまま抱きついた。

「写真で見た通りの可愛さね!! ちっちゃくて、ふわふわで……娘がいたらこんな感じなのかしら……ああカワイイっ!!」
「むぶ……あの、はじめまして……えへ」
「おいおいK・K、自己紹介もまだだろう? とりあえず離してやったらどうだい?」

ひしと抱きしめて話さないK・Kをやんわり止めようとしながら、スティーブンはアユに向かってにっこり微笑んだ。アユはというと、K・Kの歓迎っぷりが予想外だったらしく、恥ずかしそうに顔を赤らめて笑っている。これにも少し驚いた。先程まで血まみれで、今も多少は血の匂いが残っているであろうK・Kに抱きつかれて、嫌な顔ひとつしないとは。意外と肝が据わったお嬢さんなのかもしれないな、と思ったスティーブンは、マグをデスクに置き自己紹介をはじめた。

「スティーブン・A・スターフェイズだ。一応、ライブラの副官をやってるよ。よろしく、お嬢さん」
「私はK・K。銃撃専門の格闘家よ。よろしくねアユ!」

娘にしたいわね、チェインが長女で、アユは次女よ! とキャーキャー抱きしめるK・Kに苦笑いしながら、スティーブンはもう一度アユに声をかけた。

「長旅で疲れただろう。もう少ししたら君のおばあ様がいらっしゃるようだから、それが済んだら休むといい」
「はい、ありがとうございます、ミスタ・スターフェイズ。でも私、その後も挨拶に回りたいので……」
「挨拶?」

回るほどメンバーがいる訳でもないけど、とスティーブンが言いかけたその時、クラウスがハッとしたように窓の外を見た。

「アユ、いらっしゃったようだ……君のおばあ様が」

兄弟分の秘密結社の代表ともなれば、クラウスが気配を察知するのは容易い。程なくしてスティーブンのスマホにも入口解除通知がやってきた。「おばあ様?」と首をかしげるK・Kからようやく開放されたアユは、祖母を出迎えるべく事務所の入口へ向かった。重い荷物を持ったせいで疲れ果てたレオナルドも、いつもとは違うオーラを義眼越しに感じ取り、緊張の色を浮かべる。
チャ……と小さく音を立てて静かに開いた扉から、ふわふわとした紫の丸い椅子に体を沈めた、厳格そうな老婆が姿を現した。
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