Magic Green!!!本編 | ナノ
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10 We Are Friends!

01.
「ぎゃ、逆に前向きに考えましょうよスティーブンさん、一歩近付いた訳じゃないですか!」

レオナルドがそう言ってスティーブンを慰めているのを、ザップはマティーニを注文しながらぼんやりと見ていた。今この2人は、スティーブンに首根っこを掴まれ引き摺られ、お高いバーに連れてこられている。最初は、ここ数日の”大勝負”という名の暴挙への制裁が加えられるのだろうと戦々恐々していた2人だったが、スティーブンの方は彼なりに礼をしたかった(レオやK.Kの説得、進言により”大勝負”の誤解はなんとか解けた)らしく、無理やり車に乗せられバーに放り込まれ、奢ってやるから好きなだけ飲めとカウンターに座らされたのである。しかしものの30分でスティーブンが陥落。机に突っ伏したまま微動だにしない彼に、どうしたのかとレオナルドが尋ねれば……

「時に少年、友達とはなんだ」

これである。簡単に説明すると、誠心誠意心を込めて告白したにもかかわらず、「お友達から」と言われあっさり交際を断られてしまったと。スティーブンは酒に強いはずだから、酔って潰れたのではないのだろう。精神的ショックが彼を潰しているのだ。

「いーじゃないっすか! 友達! この関係を極めれば、即恋人! あはははは!」
「……落ち込むのは今日までだ……明日からはシャンとするさ、アタックだってする」

義眼越しに見えるスティーブンのオーラが可哀想なくらいに暗くなっていて、レオナルドは彼のことを相当心配した。この人、近いうちに死んだりしないだろうな……ショック死とか、ショックによる心臓発作とか、ショック死とか。

「番頭……俺達は、アンタが本気出せば大抵の女は落ちちまうもんだと今でも思ってるぜ? ただ……あのチビがその”大抵の女”の枠内に入ってなかっただけだろ」

カクテルのメニューをペラペラとめくりながら、ザップも半ば投げやりにスティーブンを慰め始めた。このクズはここぞとばかりに高い酒を注文しまくり、カウンターの前に空のグラスの山を作っている。

「友達……でもとりあえず、他の奴らよりは一歩先に出たんだ、そうだ」
「えっ」

レオナルドとアユは友達である。年も近いから、お互い今どきの話もよくわかる。ツェッドも温室でアユと仲良く談笑しているから、恐らく友達だ。チェインとは会ったその日から既に友達。K.Kはもはや友達を超えて彼女の母親である。

「旦那ともプロスフェアー友達だよなー。ギルベルトさんとは……紅茶友達か? 淹れ方教えて貰ってるっぽいし」
「パトリックさんやニーカちゃんの所にも”出張”の時に顔出して差し入れとかしてるから、多分友達っすね」
「……ザップ、お前は?」

それまで右手で揺らしていたショットが凍りついているのに気付いたザップは、座ったまま硬直した。まずい、完全に地雷だ。

「素直に答えろ……殺しはしない」
「あ……っとぉ〜……友達じゃないかな〜……きょ、兄妹っつーかぁ……」
「それ逆効果っすよ! あーっ!! ザップさんしっかり!!」

お高いバーに一夜限りで、美しく輝くクズの氷像が設置された。
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