私が大学進学のためにどれだけ勉強したと思ってるんだこの男は。


頭悪い、という言葉に私の怒りのボルテージは頂点に達し、持っていた三冊の教科書で思いっきり殴ってしまった。






「はは、殿内うける」
「黙れ櫻野…」


山下さんに教科書で殴られたあと、唖然として突っ立っている殿内の姿は笑える。


「僕は授業に行くよ。じゃ」


殿内はこの様だし、どうせ授業はサボるだろうと思い先に行く事にした。最初から殿内と一緒に行く気はなかったのだけど。




次は音楽の授業。

今日は1人1人名前順に別室で歌のテストがある。自分の順が来るまで暇だ。
皆は好きなように友人と話している。

昴は名前順では最初の方で、今はテストを受けている。暇だし、山下さんはちょっと前からいろいろと気になっていた。

これを機に話しかける事にした。

「山下さん」
「…あ、さっきの」


僕を見るなり山下さんの顔が曇る。さっき殿内と一緒に居たから殿内の友達とでも思っているんだろう。やめて欲しい。


「えーっと」


目線をキョロキョロさせる山下さんに、山下さんの隣に座っていた女子が「綾子、櫻野秀一くんだよ。学園の総代表なんだよ」と言った。山下さんはへーと息をもらし、ちらりとこちらを見る。


「総代表…そんな櫻野くんが私に何か用なんですかね?」
「用ってほどではないよ」


山下さんの隣に座った。さっきに僕の説明をしてくれた女子と僕に挟まれた形に山下さんはなった。

僕が隣に座った事により先ほどより嫌な顔をしている。


「そんな嫌な顔しないでよ。僕は殿内と友達でもなければ、山下さんと殿内の仲介役でもないよ。ただいろいろと面白そうだから、ね」
「…直感のアリスなんでしょ。見かけによらず嫌なアリスに嫌な性格なんだね櫻野くんって」


それにしても、僕は初めて女の子がここまで不機嫌そうにしている顔をみた。






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