あぁ、いたたまれない。
「いいよ。あんま腹減って無かったし」
片付けをするロボットに新しいの食事は要らないと伝え、食堂の出口に向かった。隣に立っていた速水はいつもの興味なさげな顔でこちらを見た。
「え、殿やん食べへんの?」
「あぁ」
速水にそう言って俺は食堂から逃げた。逃げてしまった。だって綾子がずっとこっちを見ていたから。
いたたまれなかった。
山下綾子。
昔付き合っていた。
幼馴染みという奴で、当時はお互いふらふら生きていた。勉強なんかしないし、学校も行ったり行かなかったり。友達と遊んで、目標もなくふらふら生きている。そんな自分達に誰も何も言わない。
今思えばバカらしい毎日。
中ニになって綾子と付き合うようになった。可愛かったから。理由はそれだけ。
綾子と付き合っていたにも関わらず違う女と遊びまわっていた。
今思えば本当に申し訳ない。今も直せないクセだが。
バレていたのかわからないが、以前は俺の女癖の悪さに何かと口うるさい綾子が何も言って来なかったという事は、当時はバレていなかったんだと思う。たぶん。
そして俺は第二の彼女と占い番組の収録を見に行って、それでアリスと判明し学園へくる事になったんだが。
あれよあれよという間だったし、綾子と話す暇はなかった。
別れの挨拶もせずに学園にきたのだ。
そんな元カノの綾子がアリス学園にいる。しかも今更。
すっかり、存在も付き合っていた事も忘れていた。
それにしても綾子は変わっていた。
とても中学生らしくない髪色だった髪。今は日本人らしい黒で。14歳の時とは違う年相応の顔。
まるで別人だった。
しかし、俺ってばよく気付けたな。
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