間違いないあれは元カノだ。
数日間任務で学園を留守にしていた。いつもの事。
今日学園に戻ってきたら速水から「転入生が来た。同い年の女の子やで」と聞かされた。
高等部にもなって?しかも自分等は18歳の高校三年だ。
アリス学園にはあと二年間学生として在籍できるが、普通の高校では就職に進学にといろいろ忙しい時期だろう。そんな時期にこんな学園に放り込まれたとは。
かわいそうに。…いや、ラッキーなのかもしれないが。
可愛い女の子かなぁなんて思いながら夕食を食べに、速水と食堂に向かった。
「あ、あれが転入生やで」
「おー」
ふわふわとした髪。後ろ姿しか見えないが可愛らしい雰囲気の女の子。
こんな学園だ。
もう見慣れた同級生しか居なかった時にいきなりの転入生は少し刺激的なのか、女の子は多くの女子生徒に囲まれていた。
「顔見えねーなぁ」
「雰囲気の通りべっぴんさんやったで」
速水の言葉に期待しながら、星階級ごとの食事が乗ったトレイを持って転校生の顔が見える場所で食事を食べようと食堂をうろうろする。
なんだ、自分も興味深々なんだな。中学生みてぇ。
そう自嘲しながら丁度顔が見える位置に空いてる席をみつけてテーブルにトレイを置いた。
いや置こうとした。なんてベタな。トレイごと食事を全て落とした。
トレイをテーブルに置く前に、転校生の顔が見えたのだ。
あぁ本当に綺麗なやつだな〜なんて思っていたら、それはもうすごい速さで記憶が巻き戻された。
「あー!殿帰って来てたんだ」
トレイや食器が落ちた大きな音に食堂に居た生徒がこちらを向く。まだ学園に帰ってきたばかりの俺に向かって、おかえりと言う声がちらほら聞こえてくる。
ロボットが落ちた食事や食器を片付けながら「すぐ新しいの用意しますね」と言う声も聞こえた。
しかしそんなのはどうでも良い。
「…綾子だ」
間違いないあの転入生は元カノだ。
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