「雪子大丈夫だった?!」
学校に帰るなり雪子の周りにはいろんな生徒が群がる。
雪子が何も覚えていない事を生徒達は知っているはずだが、その事を忘れているのかあえてなのか。
「あ、うん、大丈夫…」
「ほんとなの?
記憶喪失なんだって?私達の事はゆっくり思い出していけば良いからね!」
「…ありがとう。」
思い出していけば良いからね。
そう言っても雪子はちゃんと思い出すのだろうか。
思い出してくれるのだろうか。
「…櫻野くん」
「あ、なに」
いきなり雪子が話しかけてくるから素っ気ない返事になってしまった。
「あ、えっと、ありがとう」
「…ん?」
何がありがとうなんだろうか。
いまいちわからずに首を傾げていたら雪子はおどおどしながら再び話し出した。
「今までっていうか病院でいろいろ教えてくれたりしてありがとう…。
櫻野くんが良くしてくれなかったら私どうしていいかわからなかったよ」
にっこりと笑いながらそう言う雪子の笑顔だけは昔と変わらなかった。
「あぁ、どういたしまして」
だけど結局は違うんだ。違う。
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