雪子は体に異常はないからすぐに退院になった。
生活に支障もないから3日後には雪子の学校生活が始まる。
「勉強はわかるんだ。でもやっぱり関わってきた人は思い出せない」
休んでいたぶんのノートをとりながら雪子は言った。
「無理して思い出さなくていいさ」
僕はそう言ったけど、出来るなら早く思い出してほしい。
早く。
「櫻野くんノートありがとうね」
いつもみたいにニッコリ笑って僕に僕のノートを差し出した。
どういたしましてと言ってノートを受け取る。きっと上手く笑えているだろう。
僕がノートを受け取ると少しうつむいた。
「どうかした?体調でも悪いの?」
「ううん。大丈夫。ねぇ櫻野くん」
いつになく不安そうな声で聞いてくるから身構えた。
「私、櫻野くんと付き合ってたの?」
「…え」
なにを言い出すかと思ったらそんな事。
そんな事か。
「…どうして?」「私の部屋にね、写真が飾ってたの。だから」
やっぱり君はもう何もかも忘れてしまったんだね。
「はは。違うよ幼なじみだからね」
「何だそっかぁ」
そう言って安心したように笑う雪子を見たくはなかった。
僕の中からも雪子の記憶が消えれば良いのに。
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