ぱちぱち。
真っ青な空にすぅっと煙が登っていく。高く高く登って、気がつくと見えなくなる。煙を掴もうて手を伸ばすも掴めない。
どんなアリスを使えばいいんだろう。


儚い。


「……あー」

無意味な声を出す。

切ない。


雪子との思い出の品を燃やしていた。女々しいしベタだ。笑える。
笑ってほしい。

君ならなんと言って笑うだろう。
どんな顔で笑うだろう。

笑顔を思い出せなくなる日がくるかもしれない。それでもいい。
雪子の笑顔をとらえた写真も今は灰になって煙になる。

雪子を火葬している気分だ。



「…櫻野くん?」



「…あ、」


なんてタイミングだ。

「…やぁ、体調はどう?」
「もうバッチリだよ。櫻野くん何してるの?」


僕の足元に目をやってそう言う。


「ちょっとね。部屋の掃除して…いらない物があってさ」
「ふーん。焼き芋食べたいね。秋に、外で何か燃やしてるのみると焼き芋食べたくなる」

笑いながらそう言う彼女が恨めしい。

「…雪子みたいな事を言うんだね」
「え?」

僕の発言に目を丸くする彼女はしばらくして意味がわかったのかさっきの楽しそうな笑みとは真逆の悲しそうな笑みを浮かべる。


「寒いし、寮に戻ろうか」

いつの間にか火は消えてしまった。
それでも一応バケツに汲んでおいた水をかける。

「うん」


煙になって消えてしまった。
結局僕は掴めなかったよ。












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