シシーことナルシッサはいつもルシウスさんを見ている。いつもは直情としているのに恋するシシーは可愛いの。
「シシー」
「なぁにナマエ?」
談話室のソファーで本を読むシシーに声をかける。綺麗な金髪で、正に美少女だ。
「あのね、勉強でわからないとこがあるんだけどね…」
「いつもの事じゃない。今更なに?」
クスクスと笑いながらパタンと本を閉じる。なんだか難しそうな黒い表紙の本。
「あ、明日でいいよ!今日はもう遅いし!寝よう?」
「なに言ってるの?早く教科書持ってきなさい?先延ばしにするのはいけないわ」
「えー」
いけない。シシーを早く自室に連れて行かなければいけないのに。
「もう消灯時間になるしさ。ね?」
「私まだ本が読みたいの。このソファーが座り心地良いから集中もできるし」
その時、シシーの後ろの談話室の入り口の扉が開いた。あ、やばい。
「寝ようよ?お肌に良くないしさぁ」
「嫌」
3姉妹の末っ子シシーはやはり末っ子。甘やかされたのか、末っ子故に放置され育ててきたのか、守られてきたのか。どれに当てはまるかはわからないが、シシーはなかなかの末っ子気質だ。
そうする間にも扉から入ってきた2人の人物は楽しそうに笑いながら会話をしている。黒髪の綺麗な女子生徒と銀髪の男子生徒。
シシーはその声を聞いて後ろを振り向く。
―――あぁ、
「……」
2人は楽しそうに会話をした後、キスをした。おやすみなさいと言い合って女子生徒は頬を染めて自室に帰っていく。一部始終を見ていた私はキスシーンに少し照れたが、そんな場合ではない。
慌てて「シシー」と声をかけようとしたが、一足遅かった。
「ブラックとミョウジ?もう消灯が近いから早く部屋に戻りなさい」
スリザシンの監修生であるルシウス・マルフォイだ。シシーの思い人。
シシーは閉じた本を持ち「はい」とだけ言って女子寮に向かった。
ルシウスさんを睨むでもなく一瞥すると楽しそうに笑っていた。
ルシウスさんはシシーが好きだ。ルシウスさんとそれなりに仲が良い私は本人からある日突然聞いた。本当に突然だ。
シシーとルシウスさんも仲は良いが、ルシウスさんがまさかシシーにそんな想いを抱いていたなんて、と私は驚いたがそれ以上に嬉しかった。
シシーはそういう事には特に控え目だから早くその想いをシシーに伝えてくれと言ったらルシウスさんは耳を疑うような言葉を発したのだ。
「シシー」
シシーは部屋の前までは来たが、ただ俯いたままだ。
「シシー、あの…」
「ナマエは知ってたのね。ルシウスが誰かと付き合ってる事」
「……」
確かに知っていた。
ルシウスさんがスリザリンの同級生と付き合っていて、消灯時間ギリギリまで出歩いている事を。
そんなルシウスさんを見たらシシーは悲しむ。だから早く女子寮に戻そうと思ったんだけど、
ルシウスさんは悲しそうなシシーを見るのが楽しいらしい。悲しみと悔しさに歪んだ顔は最高に綺麗だと言っていた。
このサディスティック野郎!!と殴り飛ばしたくなったが、そんな事は出来ないのでこらえた。
「…言わなくてごめん」
「ううん。ナマエは優しいから、私が傷つかないようにしてくれたのよね」
顔を上げて弱々しく私に微笑みかける。
悲しみと悔しさに歪んだシシーの顔を見るために、わざとシシーの前で興味もない女子生徒をキスをした。
なにが嬉しいのだろうか。
「…ルシウス」
ぽろり シシーの目から涙が流れた。綺麗な碧の目から。
「…よしよし」
どうしようもなくて、私はただシシーの頭を撫でた。泣きながら笑うこのシシーの顔をルシウスさんは見れていない。ざまぁみろ。泣き顔なんかより100倍も可愛いシシーの顔をルシウスさんは知らない。ざまぁみろ。サディスティックルシウスめ。
「シシーちゃんには私がいるからね」
「なにそれ」
クスクスと笑うシシーは表面上は先ほどより元気になったように見えた。涙や心の傷を我慢しているシシーはとても綺麗だった。
Sadistic!!
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