私は今、トムと買い物に来ている。
ダイアゴン横丁に。



















物語通りにダンブルドアはトムに魔法使いだと告げに来た。

私はトムが魔法使いだという事もダンブルドアが訪れる事も知っていたので、特別驚いたりはしなかった。




あの日トムは私に魔法を見せてくれた。そしてトム・リドルの心の中を垣間見てしまったような気がしたのだ。
だから、なんとなく、トムに近づいてみた。

トムが紙上の人物で無くなった時に私がトムに抱いた感情は憎悪や嫌悪ではなく、哀れみかもしれない。というか哀れみだ。可哀想だと思った。



だから、なんとなく。



トムは馴れ馴れしくする私に暴言を吐きながらも私に魔法(トムにとっては自分にしかない特別な力)の話をしてくれた。見せてもくれた。



私は彼がそんな表情をすると思っていなかった。あの日食堂で会った彼とは大違いだ。

なんとなく、私はトムと親しくなれたような気がした。








前置きが長くなったが、つまりトムがホグワーツに行くのは寂しい。

笑顔のお別れをしようと心に決めた。トムが居なくてもまだ始まって短い第2の人生を楽しく生きようとも。

そんな時に、だ。



「お嬢さん」
「…」


ダンブルドアが目の前に現れた。へんてこだ。服装が。


「…えっと、トムへのお客さんですよね?」
「そうじゃ。君はトムのお友達らしいが…」
「お友達と呼べるかは微妙ですけどまぁお友達です」


ダンブルドアは優しい目をしていた。サンタさんがいるならこんな人間だろう。


「ユメコアリカワじゃの?」
「え、どうして私の名前を…」


まさかトムが話したのか。いや、そんな訳がない。

そう内心で自問自答しているとダンブルドアは手紙を一通取り出した。


「君もトムと同じように魔法が使える。魔女じゃよ」
「…ま、」


まさにびっくり。
まさか自分が魔女だとは夢にも思わなかった。訳ではない。実はそうかもと何度も思った。

落ちている木の枝を杖に見立てて知ってる呪文を唱えたりもした。もちろん何も起きなかったが。

でもハリーポッター界へトリップしたんだ。これは、もう期待するしかない。


「そんな、まさか私が魔女だなんて…あの、何か間違っているんじゃ」


でも驚いたのは事実。期待する自分をあり得ないあり得ないと宥める私は居て、その宥める私は私の中ですごく大きくなっていたから。

とりあえず手紙を受け取り宛先を確認する。

私の名前だ。


「夢のようかの?」


ダンブルドアは何故かキラキラと目を輝かせる。トムも魔法を語っている時はこんな目だったなと、ふと思い出した。


「…夢ですかね」
「現実だよ、お嬢さん」


ふわり。雲のような声だった。






そんな訳でダイアゴン横丁だ。

私が魔女だと告げるとトムはベッドから落ちるんじゃないかというくらい驚いていた。面白かった。




ホグワーツでは私の知らないトムをもっと知れたら良いな。






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