「あいつトム・リドルっていってすごい嫌なやつなの。頭もかなりおかしいわ」
キャシーにそう聞いた時私は発狂するかと思った。
トム・リドルとはあのトム・リドルか。トム・マールヴォロ・リドルか。ヴォルデモートの本名か。
今は1935年。正確な年月は覚えいないが、ざっと数えてみても今はヴォルデモートの幼少期とかそこらへんだろう。
そしてここはロンドンの孤児院。
全てが当てはまる。
トリップという単語が頭をよぎった。ネットで仕入れた知識だ。
これは、いわゆるトリップというやつか。
そう理解した瞬間、今度こそ本当に発狂しそうになったが、ぐっとこらえた。
「き、キャシー」
「なぁにユメコ」
「えっと、トムはいつから孤児院にいるの?」
「…産まれた時からってきくけど」
キャシーはそれはそれはもう嫌な顔をしていた。本で読んで知ってはいるが、よっぽど嫌なやつなのだろう。
読んでいるのと、体験するのとでは違うはずだ。
私もヴォルデモートはあまり好きではなかった。それが幼いトム・リドルであろうと変わりはない。
第6巻での幼少期のヴォルデモートの話を読んでも、歪んだ性格の彼に良い印象は持たなかった。
最後の瞬間まで愛を信じなかった彼は私とは全く違う人間なんだと感じた。愛を知らない、信じようとしなかった可哀想なヴォルデモート。
きっと彼を愛した人物も居なかったに違いない。
「なに、あなたトムに惚れたの?」
「え?」
「トムがハンサムだから」
私が慌てて否定するとキャシーは「良かった!」と大声で言った。
「お前も僕が気持ち悪いと思ってるんだろ」
私は、出くわしてしまった。
トム・リドルが職員に叱られていた。何をしたのかはわからないが、叱られていた。
トム・リドルは表情一つ変えずその話を聞き、職員は立ち去る間際にトム・リドルに聞こえるように「気味の悪い子」と言っていた。酷い!とも思ったがこの目を見ていると同情もできない。
私はこの場面にお約束のようにそこに出くわしてしまった。
しかもトイレを探して迷っていたのだ。お約束すぎる。
「お前もあのキャサリンとかいうやつに僕の話を聞いて気持ち悪いと思ったんだろ」
歳にそぐわないギラギラとした目。恐怖意外感じない。
「……」
何も答えられなかった。
「何も言わないって事はイエスだな」
「…えっと、寂しくないの?」
ピクリとトム・リドルの眉が動いた。
「友達居ないでしょ、あなた。それに誰からも好かれてないし、初対面の私があなたを気持ち悪いと思っていると思ってる。寂しくないの?」
「…寂しい?」
リドルの瞳に赤い光がチラつく。
「僕がお前にそんな事言われなきゃ?僕はお前等とは違うんだ。寂しくなんかない。一緒にするな」
その場の空気が重くなる。外は晴れているはずだが、例えるなら今にも雨が振り出しそうな空気だ。
トム・リドルは私が思っていた以上に可哀想な人間だ。
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