夕飯の時間になり食堂に向かう。キャシーは私と同じ9歳らしい。

先ほどキャシーと同じ部屋に居た女の子は、アンナという名の私より2つ上の大人しく綺麗な女の子だ。
キャシーとアンナと食堂に向かい、キャシーの隣に座る。


「ユメコはニホンからきたのよね?料理が口にあうかしら」
「好き嫌いはないから大丈夫」


孤児院と聞くから陰気な物かと思ったがそうではないらしい。確かに全体的な雰囲気は暗い。今日まだ少ししか過ごしてはいないが、子供への世話は事務的な職員に唖然とした。

しかし子供達は明るく、仲が良く楽しそうなのでここは私が想像していた場所とは違った。学校のようだ。


「キャシーったら同い年の女の子がきて嬉しいのね」


ちょっと離れた席から金髪の綺麗な女の子が笑いながらそう言った。


「だって同い年の子は2人しか居ないのよ?そのもう1人は…」


キャシーは途端に嫌そうな顔をしてパンに手を伸ばした。
まだ見ぬもう1人の同い年は、よっぽど嫌な奴なんだろうな。
呑気に飲み物を飲みながらそう思っていた。



しばらくすると向こうから職員に手を引かれて食堂に来るやや背の高い少年の姿がみえた。年上だろうか。

少年が食堂に入り空いているテーブルに仏頂面で座る。
先程まで賑わっていたその場は静まる。しかしそれは一瞬ですぐに再び賑わうが、それは異様だった。


かなり整った顔の少年。
惹きつけられるようにじっと少年見ているとなんだか不気味な瞳がこちらを見てきた。


「…誰だ」
「え、あ、私?ユメコだよ。今日からここに入ってきたの。よろしく」


少年が醸し出す雰囲気にたじろぎながら返事をした。すると少年は歳にそぐわない笑みを浮かべて、パンを取り皿に取りながら言った。


「お前の英語は下手くそで聞き取れないな」


ぱくり。
少年はパンをちぎり口に運ぶ。まるで何も発言などしなかったかのように。


「え…」
「聞こえなかったのか?お前の英語は下手くそで聞き取れないって言ったんだ。
あぁ、僕の言葉通じないのか?」


楽しそうだけど嫌な笑み。悪戯をしてやったりとか、そういう笑顔ではない。


自分は英語を学んだ事はないので、確かに下手かもしれない。しかし今自分は母国語なみに英語をスラスラと話し聞き取れているので、何も気にしていなかった。まぁ不思議な事だが事実だから仕方がない。

しかし、本場の人達からしたら実は聞き取るのも難しい程に下手な英語なのかもしれない。自分ではわからないだけで。


「ユメコ気にしちゃだめよ」


キャシーが私にしか聞こえないようにそう言う。
ありがとう、小さく呟きこれ以上この場の雰囲気が悪くならないよう食事を続けた。






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