「やっとマッチ棒を針に変える事が出来た女の子が補習を望むとはの。感心じゃ」


勉学に励むのは大切な事じゃよ。なんて既になかなかなお年のダンブルドア先生が優しい目を細めながら言う。


「君の成績不良は魔力が劣っているわけではなく、勉強嫌いからだと思っていたが…どういう風の吹き回しかの?」


ダンブルドア先生の言葉は全てカマかけにしか聞こえない。ついつい身構える。
そんな私に相反してのほほんと日和見爺なダンブルドア先生。


「…まぁ一応私も魔女ですし魔法は出来た方が良いと思って」
「うむ、良い考えじゃ…。さて、まずは何をしようかの」


私は閉心術と開心術が使えるようになりたかった。トムは、というかヴォルデモートは閉心術と開心術に長けていたに違いない。


これから殺人を犯しながらも学校1の模範生であり続けるトムは既にその2つをマスターしているかもしれない。
そう考えると、私もその2つの魔術を使えるようにならなければいけないと感じた。

私には原作の知識があるのだから。それは誰からも知られてはいけない彼らの未来だ。
誰かが私の心の中を読み取った時、その事を知られたらと考えると恐ろしい。


魔法をろくに使えない学校1落ちこぼれの私にそう簡単に出来るようになるのか。

とりあえず授業で習う事を極める事にした。千里の道も一歩から。継続は力なり。


「それじゃあ手始めにこのコガネムシをボタンに変えてくれんかの。君は確か、去年コガネムシをゴキブリに変えていたがな」
















こうして3年生では血を吐くような努力をした。

勉強勉強勉強。魔法魔法魔法。寝ても覚めても勉強。杖はこれでもかというほど振ったし英語はスラスラ読めるようになった。

今までほとんど聞き流していた授業もちゃんと聞いてみる。意外に面白い。
私が勉強をして成績が徐々に上がる度に先生達は褒めてくれる。やりがいもあった。


おかげで学年末試験は11位。自分でも驚きすぎて失神しそうだった。
勉強に付き合ってくれたミネルバは一緒に喜んでくれた。去年は最下位で失神しそうだったのに、人は努力すれば変われるのだと実感。


「本当ユメコ頑張ったわね。来年は5位以内よ」
「プレッシャーかけないでよ!」


1年間私は勉強が恋人状態だった。むしろ勉強が友達。もとから友達はミネルバとトムしか居ないが。

そういえばこの1年トムとまともに会話をしていない。


ミネルバにはずっと勉強を教えてもらっていたが(彼女には彼女の友達がいるのに申し訳ないが)、トムの顔さえ見ていない。


私が11位だったと知っているだろうか。トムはもちろん1位だった。
どう思うだろう。褒めてくれるだろうか。


「あ、私図書館に行ってくるね」
「私も行くわよ?」
「ううん。返すだけだし、1人で大丈夫。」
「そう?なら行ってらっしゃい」


長い廊下でミネルバと分かれ歩き出す。
この1年図書館には通い詰めた。それはそれはもう。

学年末試験も終わり、すぐに夏休みがくる。図書館利用者は少ないだろう。

それを狙って今日は来たのだ。案の定図書館に人は少ない。



「さて」


閉心術開心術はどの本に乗っているだろう。図書館での本探しを全てミネルバに任せていた事を今更ながら後悔。






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