「ねぇねぇねぇねぇねぇ」
「うるさい」


夏休みも終わりホグワーツに戻った。そんなある日、木陰で難しそうな本を読むミネルバに声をかける。

未だに友達という友達がいない私は1人でいるかミネルバといる。
トムとは学校ではたまにしか会わない。トムは常に誰かと居るからだ。あまり私と一緒に居るところを見られたくないらしい。


「なに、私本読んでるの」
「見ればわかるよ。ねぇ、ちょっと教えて欲しい事があるの」
「なによ」


しょうがない付き合ってあげるわという顔のミネルバの耳に口を寄せる。
私の行動に驚いたのか、ギョッとするミネルバが逃げないうちに慌てて口を開き言葉を発する。


「許されざる呪いって知ってる?」
「…は?」


ミネルバ、固まってしまった。
闇の魔術に対する防衛術の授業でもまだ取り扱わないそれ。
しかし彼女の様子を見る限り知っているようだ。


「…それがどうかしたの?」
「私にも使えるかな」


私がそう言うとミネルバは「バカじゃないの?!」と叫んだ。


つくづく思うが若いミネルバは原作のマクゴナガル先生とは違う。
まぁ私が知っていたマクゴナガル先生はミネルバ・マクゴナガルという人間のほんの一部だ。
あの物語を読んだだけでミネルバの性格全てを知るのは不可能。

これはこれで、あれはあれでどちらも本当の彼女なのだろう。


「なに考えてるの?ていうかあんた程度の魔法の腕で…バカじゃないの寝言でも許せないわ!せめてマッチ棒を針に変えれるようになってから寝なさいよ!」
「ちょ、ばっ、この前ミネルバが教えてくれて針に変えれるようになったじゃん!」
「あぁ、そうだったわね。マッチ棒を針に変えるなんて1年生レベルなのに…」


深い深いため息を吐くミネルバはあの特訓を思い出したのだろう。彼女曰く、まさに「骨の折れる」指導だったらしい。

ため息を吐き終わったミネルバは「で、なんで?」とこちらを睨むように見てきた。


「…いやちょっと」
「……」


ジト目だ。恐ろしい、ミネルバのジト目。


「あ、いや、すいませんでした…出来心で…」
「そういう道に走るつもり?」
「え、まさか!」


とんだ勘違いをされて否定する。


「普通の人はそう思うわよ。発言には気を付けなさいよ」
「…はぁい」


確かにそうだろう。
そういうことわざか何かあったな。李下に冠を正さず?


「ねぇミネルバ、そういう道って…?」


まだ聞くかと言いたげな目だったが、周りに人が居ないのを確認しミネルバは口を開いた。


「昔から闇の魔術にのめり込んで身を滅ぼす人は少なくないのよ。…差別するわけじゃないけど、特にスリザリンには」


言い終えると元と全く変わらない姿勢に戻し、本に目を向けた。


「ま、ユメコがそうなるとは考えがたいけど」


ポツリと呟いたのを最後にミネルバは読書を再開した。これ以上その話はしたくないという彼女のサインだろう。

私は暇になり無意味に空を見上げる。


私もトムがそういう道に走るとは考えがたい。
だって私にとってのトムはヴォルデモートでも、マートルを殺したリドルでもない。


私はこのままトムが闇に向かっていくのをただ見続けるだけなのだろうか。






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