トムはとにかく不機嫌だった。
それでも組み分けの儀式が始まる。


「君はどの寮に入ると思う?」


触らぬ神に祟りなし。不機嫌なトムに話しかけず隣に黙って立っているとトムから話しかけてきた。


「…わかんない」


本音だ。自分がどの寮に選ばれるかわからない。
どの寮にも向いていない気がするし、どの寮にも適している気もする。


「ふーん。ま、君がどの寮に選ばれたとしても仲良くしてやるよ」
「え?」


前を向いたまま今までと一切変わらない声色でトムは言った。信じられない。


この世界にきてトムにも11歳の子供らしさと人間らしさを感じる。
ヴォルデモート郷や本に書いてあった11歳のトムのように冷徹で残酷なところばかりではない。

笑っている。私が怪我をしたら将来人を殺める杖で治してくれる。


もしかしたら、彼は変われるのかもしれないな。なんて考えてしまう程にトムに私はトムへのイメージが変わった。




「絶対だよ!」
「は?いきなり叫ぶなよ」


ぐぐっと眉間の皺を深くしたトムは周りをキョロキョロとみる。私が叫んだから周りから注目を浴びてしまったのではないかと気にしたらしい。


「私、ずっとトムと仲良くしていたい」

トムの手をとる。初めてトムに触れた。トムは驚いたのか目を丸くし、振り払おうと手に力を入れたのがわかった。が、私の手を振り払う事をせずただ目を泳がせた。


「マクゴナガル・ミネルバ」

組み分けされる生徒の名前を叫ぶ声。聞き覚えのある名前がして、トムから前に視線を移す。

私はトムから手を離した。


「…あの子だ」


駅でぶつかった女の子。彼女がミネルバ・マクゴナガル。マクゴナガル先生だったのだ。


「グリフィンドール!!」


組み分け帽子が声高々に叫ぶ。グリフィンドールのテーブルから拍手喝采。女の子、未来のマクゴナガル先生はニコニコと笑いながら拍手の中に飛び込む。


ハリーポッターのキャラクターだ!と若干興奮していると「リドル・トム」と、トムの名前が呼ばれた。

しかし名を呼ばれたトムは何かを思案しているようだ。


「…トム、名前呼ばれたよ?」
「あぁ」


隣に立っていたトムは前へ向かって歩き出す。
組み分け帽子をかぶりしばらくすると「スリザリン!」と帽子が叫んだ。

スリザリンのテーブルから拍手、拍手、拍手。あんなハンサム少年がきたから興奮しているのだろうか。


さて、私はいつ呼ばれるのだろう。






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