私はあまりに魔法の腕が悪かった。
「ユメコとホグワーツで過ごせるのは長くて2年かな…成績不良で退学なんて可哀想」
「まだ退学するって決まってない!」
トムに教えてもらった魔法はどれも簡単なもの。ウィンガーディアム・レビオーサなんて、ハリーポッターでも有名なあれだ。
簡単そうだし出来ると思ったが、難しかった。仕舞いにはハンカチは爆発した。
ある意味天才だねとニコリと笑ったトムには私のハンカチをあげた。
そんな事をしているうちに列車は到着したようだ。
ハグリッドに会えるとワクワクしたが、時代が違う。そう気づいて少し肩を落とした。
湖を渡るためにボートに乗る。私とトムは最後の方まで待たされた。待たされたのでトムがとてもイライラしていた。
やっと乗れた時にはもう私とトムしか居らず、2人だけでボートに乗った。
「魔法があるのになんでこんなボートになんか…」
「楽しいから良いじゃん」
トムは深い深いため息を吐く。なるほど、トムは楽しむ事も知らないのか。
「しかもこんな待たされて…信じられない学校だ。もっといろいろ考えるべきだな。ここを担当している大人が1人しかいないからこうなるんだ。あと4人くらい居たらスムーズにすむんだよ。
これだけたくさんの子供が黙って言うことを聞くわけないだろ」
相当イライラしているようで口がよく動く。意外にトムはわかりやすい。
わかりにくい所が沢山あるが、わかりやすい所もある。
「そんな私たちも同じ子供だよ」
なだめるようにそう言えば睨まれた。微かに赤い瞳。
「同じ子供?笑わせるね」
口の端を吊り上げるトム。目は笑っていない。11歳でこんな笑い方をするのか、とぼんやり考える。
ボートは目的地に着いたようだ。
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