「うち、佐倉蜜柑言います!
初等部B組で、えっと、無効化のアリスです!」


蜜柑と名乗る女の子はガバッと頭を下げた。そして頭を上げ、キラキラと目を輝かせる。
じーっとこちらを見つめる女の子に、私も自己紹介をしないといけないようだ。

それにしても無効化とは。やっぱり鳴海先生、行平校長が言っていた子だろう。


「佐倉蜜柑ちゃんって言うのかあー、可愛いね。
私は西有春希です。よろしくね」
「春希先輩やー!
翼先輩らとも久しぶりって事はしばらく会ってなかったん?」
「うーんとね、」


面倒くさい質問きたな、と頭を捻らせる。


「のだっちに聞いても、アリス関係でしばらく帰ってきませんってしか教えてくれなかったんだぜー!」


翼がブーブーと横から槍を入れてきた。

後輩である翼達には何も言わずに学園を出ていった。野田先生もそんな私の心情を察して何も言わないでくれたのだろう。

流石はツーカーの仲だ、私達。


「うん、ちょっとね。アリス関係の仕事があって学園を出てたんだ」
「ほへぇ〜、春希先輩大変なんやなぁ」

蜜柑ちゃんは信じたようだ。翼も特に追求はしてこない。

アリス関係の仕事で何年も学園を出るのは現実的に考えておかしいが、他に言い訳も見つからない。納得してくれたから分からないが、何も言わないなら良し。


「じゃあ野田先生も居ないし帰るわ」
「えー春希さん遊んでかないの?」


驚いた、とでも言うように翼が聞いてきた。

まさかここで引き留められるとは、こちらが驚きだ。
お目当ての野田先生が居ないのなら、今すぐ寮に戻って寝る気満々だったのに。

話しを聞くと、まだ誰も遊びには来ていないとの事。とってもとってもとっても楽しいからと蜜柑ちゃんが言うが、乗り気にならない。


「んー。学園に帰ってきたばっかりでまだ疲れてるし、ごめんねぇ…」


出来るだけ自然に困った笑顔を作りそう言うと、翼が「じゃあ今度な!」と歯を見せて笑った。昔からよく見せる表情だ。


「春希さんに挨拶しよろ蜜柑ー」


翼は肩を落とす蜜柑ちゃんにそう言いい背中を叩いた。


翼も美咲も、入学したときから面倒をみてきた。
数年離れていたとはいえそのお陰だろう。なんとなく、今日再会してから今までの、翼の表情の裏の気持ちがわかってしまう。

じゃあねと言ってその場を離れる。
蜜柑ちゃんもなだめている翼を見て、あいつもそれなりに成長したんだなと感じた。

それにしても、疲れた。






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