「いらっしゃ〜い!」


アラジンにでも出てきそうな格好をした大勢の生徒がそう叫んだ。



結局、特力系エリアへと足を運んだ。野田先生に会いたいというのが主な理由だ。



異国情緒溢れる特力エリアに、アジアンテイストな衣装を身に纏った生徒達。
文化祭を楽しんでいるようで何よりだが、集客は上手くないようだ。

ポニーテールの元気な女の子が自分達の出し物のルールを説明してくれているのを聞き流し、お目当ての人物を探す。

が、ここにある顔を見ても見ても野田先生は見当たらない。


「ねぇ」
「はい!」


元気に返事をした女の子。
可愛いな。良いな、子供って。


「野田先生居るかな?」
「え、のだっちですか?」


ポニーテールの女の子は困ったように眉をハの字にし、うーっとうなる。
その後「居ません!」と、これもまた元気に言った。可愛い。


「そっかあ」
「お姉さん、特力のRPGしに来たんちゃうの?」


来て早々野田先生の名前を出した私が客では無いと勘づいたらしい女の子は、先ほどよりも眉をハの字にした。これも可愛い。つまり、全部可愛いのだ。


「うん。違うよー」


ガーン。そう効果音が聞こえてきそうな程に落胆した女の子に申し訳ないなぁと思いながらも再び周りを見渡す。

アラジンの世界なんだろうか。今年は珍しく気合いが入っている。
時間、かかったんだろうなあ。


「…あれ、翼?」


ちょっと離れた所に居た黒髪の少年。見覚えのある顔だ。

最後に見たのは、確かまだ奴が初等部の時。


「翼、でしょ?」
「……えーと?」


少年は頭にクエスチョンマークを浮かべてポカーンと口を開けていたが、数秒してパッと表情を変えた。


「…あー!春希さん!」
「気づくのが遅くないかー」


忘れてたー!なんて笑いながら言うのは安藤翼。
最後に会った時と比べて背も伸び、まだ幼さは残るが顔も随分大人びていた。声だって低く、まるで別人のようだった。


「忘れてたってなに?」
「えー?いやあ、ははは」
「別に良いけどさあ……。それより、背伸びすぎじゃない?大きくなったねえ」
「何そのセリフ。ババァかよ」


事実を言ったのにババァ扱いだ。
相変わらずの失礼極まりない翼にどう返そうか考えていると「久しぶりー!」と、翼の後ろからひょっこりと現れたへそ出しの女の子。

これは美咲だ。


「きゃー!美咲ちゃーん、何その格好ハレンチ!」


翼を無視して美咲の側に寄った。なんだか悲しくなるくらいのスタイル。


「衣装だよ、いーしょーうー!」


綺麗になったね。と言いそうになったが、これもまた翼の言葉を借りるならババァくさいので言わない事にした。


「美咲ちゃんったらべっぴんだから何着ても似合うねえ」
「おっさんみたいな台詞言ってんじゃねーよ」
「こらこら翼、ババアの次はおっさんかよ」


これが私の居なかった二年という時間なのか。
昴達も変わってはいたが、やはり十代前半。育ち盛りの成長には目を見張るものがあった。

それにしても、懐かしい。
どうしてか分からないが胸が苦しくなる。


「でもすごいね、衣装もセットも凄く凝ってる」
「今年は頑張ったんだよ」
「凄いねー、偉い偉い」


よしよしと美咲の頭を撫でるふりをする。
あんなに小さかったのに、私よりも背が伸びていた。

ぽかんとしているポニーテールの可愛い女の子が「翼先輩の知り合いなん?」と、ヒソヒソと翼に聞いてるのが聞こえた。

見覚えのない顔だ。噂の新入生だろう。


「知り合いもなにも特力の先輩だぜ」
「先輩!?」


ぱあっと明るい表情になった女の子はこちらを見た。うん、可愛い可愛い。
どっかの翼とは違って可愛い後輩が出来たようだ。







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