寮鑑室へ向かった。あのまま秀はどこかに行き、昴曰く寮鑑室だろうとの事。
因みに寮鑑室への間、昴とは無言だ。何か言って欲しい。
「あれ、そのまま部屋に居て良かったのに」
「お前が何か用があるみたいだったから…」
だから戻って来たんだが。そう続けた昴と、楽しそうな秀を部屋の奥のベッドに腰かけぼんやり眺める。
(ていうか…夕食食べ損ねちゃった)
よく考えたら、昔は手を繋いだり今日のように抱きしめあったりなんか普通で、私が変に意識しているだけで昴からしたら普通なのかもしれない。
というか、深い意味も、変な意識もないのだろう。
考えていたら虚しくなりはぁ、と息を吐く。
いつだったか秀に「恋する乙女だね」とからかわれたが、本当そうだ。
「だいたい昴はいつまでそうしてるの?」
「黙れ猫被りが」
昔のように言い合う2人を見て懐かしさを感じる。
今はまだ別にこのままでも良い。
そうそう、元から気持ちを伝えてどうこうなんて考えてはいなかったし。このままで良いんだ。
「もー、じれったいなぁ」
「お前になにがわかる」
「はいはいごめんね。僕にはわかりませんよ」
何の話しをしているんだろう。楽しそうだな。
等と思っているとグルグルとお腹がなった。流石に聞こえないだろうと思っていたが、バッチリ聞こえたようで。
「こ、これは…セントラルタウンでかなりのお値段で売られている菓子折り…」
寮鑑室の棚から出てきたのは包装から高級感が出ている菓子折り。
「なぜこんなものが寮鑑室に…」
「よく頂くんだよ」
「へ、へぇー良い生活してるね」
寮鑑になるとこんなものが貰える生活が始まるのか。
「じゃあ遠慮なくいただきまーす」
「ふふ。夜は長いんだ、いろいろ詰まる話しをしようじゃない」
パクリとお菓子を口に含んだ瞬間秀が怪しく微笑んだ。
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