「足腰弱いわね。いったいいくつよ」
「うう…十八です」
着物の裾を踏んで転けた。
誰もいない廊下を静音ちゃんと歩いている時で良かった。誰かに見られていたら恥ずかしいなんてもんじゃない。
「もうやだ帰りたい」
「せめて今井さん達をお迎えしてからにして」
「やだよーキツいもん」
「ワガママ言わない」
静音ちゃんに腕をひかれ、だらしなく歩く。静音ちゃんはしゃきっとしなさいと怒りもせず無言で歩いている。
なんだか胃のあたりがムカムカする。体調がよろしくないようだ。
やはり良い日ではないな、今日は。
入り口まで行くと可愛い振り袖を着た蛍ちゃんと蜜柑ちゃん、鳴海先生になぜか翼も居た。
「なんで翼が居るのー?」
先生はまだわかる。蜜柑ちゃん達の担任だし、送りにきたのだろう。でも翼が居る意味がわからない。
蜜柑ちゃんや蛍ちゃん、棗くんが静音ちゃんと一緒に話している間翼にこっそりと聞いた。
「いやぁ、こいつらがくっついたの俺の責任っつーか」
なんつーか、と頭を掻きながら翼が気まずそうに言った。
しばらくして鳴海先生と翼を追い払い、四人を連れて奥座敷に向かう。
「あー遠いなぁ」
そう愚痴をこぼすと静音ちゃんが静かに睨んできたので黙る事にした。この重く動きにくい着物を着て動き回るのはとても辛い。
玄関フロアの階段を登っていると様々な声が聞こえる。さすが女だらけ。蜜柑ちゃんだって十分に可愛いのに、嫉妬とは醜い。
「蜜柑ちゃんっ」
背中合わせに歩く蛍ちゃんとルカくんに配慮してゆっくり階段をのぼっていると聞き覚えのある声がした。
「…のばらちゃん?」
声の主はのばらちゃんで、蜜柑ちゃんに何か必死に頼み事かなにかをしているようだ。蜜柑ちゃんとのばらちゃん仲が良かったんだ。
「…?」
のばらちゃんの願い虚しく、私達が階段をのぼり終えたために扉は閉められた。
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